キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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文化祭!


赤い魔女


「来年はうちもこういうのやってみるのもいいかもね」


蘭が言ったそれは、体育館を貸し切っての演劇で。


「ならお姫様役は蘭が良いと思うー!」
「えぇ?私は無理だよ。あおいの方が似合うと思うよ」
「じゃあ王子は新一くんかしらね?」
「反対。絶対反対。断固反対。俺他校で関係ねーけど、それだけはほんとに反対」


快斗くんの言葉に蘭が苦笑いした。
ここで園子がトイレタイムと言い出したので、快斗くんが最寄りのトイレに連れてってあげることになり、私と蘭は体育館非常口の階段に腰を下ろして待つことにした(何故なら焼きそばや唐揚げを持っていたため)


「他校の文化祭初めてだけど、帝丹と雰囲気違っておもしろいね」
「わかる!うちはお金かけてそーなお店もあるけど、江古田はなんかこう和気あいあいと気合いで乗り切る感じする!」
「ははっ。そーだね」


蘭と2人そんな談笑をしていた時だった。


「ここに黒羽くんがいたような気がしたんだけど?」


そう言って私たちに声をかけてきた綺麗な女の子ー小泉紅子ーが近寄ってきた。


「あ、うん、快斗くん今トイレに行ってて、」


答える私の顔を、小泉紅子はジーッと見ていた。


「あ、あの…?」
「…あなた、おもしろい魂をしてるわね」
「え?」
「あー!紅子オメー何勝手にあおいちゃんに近づいてんだよ!」


小泉紅子が私に話しかけてきた。
と、思ったところで快斗くんと園子が戻ってきた。


「ダイジョーブ?変なこと言われてねーか?」
「人を変質者みたいな言い方しないでくれる?…それより黒羽くんたら、随分変わった生き物を連れてるのね」
「俺の彼女だっ!」


小泉紅子は依然ジーッと私を見てきた。
…いきもの…。
って…私…もしかして…この人の中で人間カウントされてないんじゃ…。


「彼女?………あなたの手に負えないと思うけど?」
「オメーには関係ねぇだろ!!」


コイツいるなら場所変えようと、快斗くんが焼きそばや唐揚げを持って移動しようとした時、小泉紅子がスッと私の側にきて、


「ねぇ」


コソッと耳打ちしてきた。
ちらっと、小泉紅子の方を見ると、なんとも言えない表情で私を見ながら、


「あなた、本当に『ここ』の人間?」


はっきりと、そう言ってきた。
驚いて目を見開いて見つめる私に、小泉紅子は綺麗に弧を描いて笑った。


「あなたに興味が湧いたわ」
「だーーっ!!!紅子!!近寄るんじゃねぇよっ!!あおいちゃん!こっち!!」


そう言って快斗くんが私の腕を引っ張った。
そしてそのままその場を離れて校舎の中に入ったわけだけど…。


「ほんとに何もされなかったか!?変なこと言われたりとか、」
「何そんな慌ててんの?そもそも変なことってどんなこと言いそうなのよ?」


慌てる快斗くんに冷静に園子がツッコミを入れた。


「いや、なんかアイツやたらと絡んできてさ、」
「へぇ?絡む?なんのために?」
「えっ、なんの!?し、知らねーよ、そんなの!」
「…あおいが問いつめないからって調子乗ってんじゃないでしょうね」
「何の話だよ!?」


園子と快斗くんがギャーギャーと言い合っている時、さっきまでいた場所に目を向けると紅子がこちらを見ていた。
この距離だと小泉紅子の声は聞こえるわけがない。
でも確かに、


「また会いましょう、黒い子猫ちゃん」


そう声が聞こえた後、紅子は再び弧を描いて笑っていた。


「あおい?どうしたの?」


蘭の言葉にハッとすると、そこにはもう小泉紅子の姿はなくて…。


「あ、ううん…。なんか…綺麗で、不思議な人だったな、って」
「あー、わかる。ちょっと…ミステリアスって言うのかな?そんな感じな人だったよね」
「近寄んないで。マジで近寄んないで。アイツほんとに変わってっから」
「だいたい彼女誰なのよ」
「あー…紅子って言う、夏休み明けに転校してきたクラスメイトなんだけど、」


快斗くんが紅子について説明している言葉が耳を掠める。
…あの人、はっきりと言った。
本当にここの人間なのか、って…。
その前は確か、おもしろい魂って言い方してた。
紅子は赤魔法使いの魔女で。
あの人にはもしかしたら、私には見えない何かが見えて、わからない何かがわかるのかもしれない、って。
この時初めて思った。

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bkm

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