キミのおこした奇跡ーAnother Blue


≫Clap ≫Top

思い出の時計台


だめなんて、


夏休みもあとちょっとで終わるって頃、怪盗キッドの犯行予告のニュースを定期的に目にするようになった。
快斗くんはやっぱり自分がキッドだとは言わない。
それはやっぱりどこか寂しくもあるけど、仕方のないことだと自分の中で消化しようとしていた。


「そーいやあおいちゃんを時計台に連れてってねーよな」


そんなある日、快斗くんが徐に聞いてきた。


「時計台?」
「そー。江古田にある時計台。テーマパークに移築されるんじゃねーか、って噂があんだけど、もしほんとならなくなっちまうだろ?その前に見に行かねー?」


それはたぶん、快斗くんと中森さんが出逢ったあの時計台のことだ…。


「時計台…」
「そーいうの興味ない?」
「あ、ううん、そういうわけじゃなくて…。そういうの見たことないからどんな奴かな、って」


私の言葉にあぁ、と快斗くんが言う。


「結構デカい奴でさー、日によっては俺ん家にいても聞こえるくらいの鐘の音が…あ、ほら、あったあった。これだよ」


そう言いながらケータイ画面を見せてきた快斗くん。
画面には下から撮ったんであろう、アングルの時計台の写真が写し出されていた。


「音も綺麗だし、気に入ると思うけど。行かねー?」


この時計台が無くなることはない。
だってキッドが守ってくれるんだから。
…中森さんとの思い出の場所を、守るんだから。


「いいよ、行こう」
「よし!じゃあいつ行く?どーせなら何かイベントしてる時がいいよなー」


そう言って快斗くんはまたケータイを弄りはじめた。
…結局今、快斗くんと中森さんはどうなってるんだろう。
怪盗キッドが現れた、ってことは、中森さんのお父さんである警部がキッド逮捕の指揮を取ってると思う。
そうなってくると、中森さんと仲良くしてる方が何かといいんじゃないかな、って思う。
いろんな情報が聞けるわけだし…。
原作でも中森さんちにご飯食べに行ってる時に情報もらってたりしたし…。
だから今も、そういうことしてるかもしれないよな、って。
でもそれを咎めることは出来ないどころか、そもそも聞くことも出来ないし。
またちょっと、胸がモヤモヤする。


「えっ?」


私がそんなこと考えていたら、快斗くんがほっぺにピタッと手の平を当てて触れてきた。


「やっぱり行くのやめるか?」


ちょっと心配そうに、伺うように私を見てくる快斗くん。


「う、ううん!行くよ、行きたい!」
「そ?なら良かった」


一度視線を落として頷いた快斗くんは、依然として私のほっぺに触れていた。


「じゃあさー、時計台のある公園でイベントあるらしいし、その時に行かねー?」


その後、江古田に行く日を決めたわけだけど。
相変わらず快斗くんの手は私の顔や首辺りを触れていて。
…………これは聞いてもいいの!?


「あ、あのさ、快斗くん」
「何ー?」
「…こっ、ここここの、手は…?」


スッと快斗くんとは反対側の方に視線をずらしながら聞いてみると、


「触っちゃだめ?」


ちょっと悲しそうな声でそう言われた(手はそのままだけど!)
触っちゃだめ?なんて聞かれて、うん、だめ。なんて言う子いると思う!?いないってそんな子!!でもこういう時、ううん!全然触ってオッケー!!みたいに言えるわけないでしょ!!じゃあなんて言うのどうすればいいのだってそんな私どうしたら


「ほんとはもっと触りてーんだけど」


えっ!?って声にならない変わりに全力で「えっ!?」って顔して快斗くんを見た。
だってそんな今でさえほっぺとか首とか触ってて、もっと触りたいってだってつまりはそんなそんな


「…いい?」


間抜けに、えっ!?って顔してる私をジッと見てくる快斗くん。
あの日、…快斗くんに誕生日プレゼントって言った日から結局キッドのことがあったり、夏休みでバタバタしたりで全然そういう雰囲気にならなかったけどなにそれもしかしてそういう雰囲気にならなかったって思ってたの私だけで快斗くんもしかして、


「あおいちゃん、」


もしかしてずっとそう思っててくれてたのかな、なんて思ってしまった私は、


「…」


黙って頷くしかないわけで。
それを見た快斗くんも黙って私を抱き寄せ、ちゅっちゅっして身体を押し倒してきた。
…ひーーっ!!慣れない!!まだっ!!こういう流れはっ!!慣れないっ!!!!


「ははっ!」


まず手をどこに持っていったらいいのかわからない私はウルトラマンがビーム出すみたいなポーズで固まっていたわけだけど、それに気づいた快斗くんが柔らかく笑った。
私の固まっていた手を取って、指先にちゅっと口づけた。


「大丈夫。あおいちゃんがいいって言うまで下は触んねーから」


そう言ってもう1回、手にちゅっとしてきた。
………や、でもそんな私のタイミングだとしても、私から触ってなんて言えるわけなくて、ならいっそのこと今強行突破してもらった方が私的には良いのでは!?でもそんな何の心の準備も出来てないし、やっぱり今じゃない!?!?


「……ごめん、嫌だった?」


うわぁぁぁ!!!ってなってた私はすでに顔真っ赤で泣きそう(うそ、もうちょっぴり涙出てる…!)になっていて。
それを見た快斗くんがびっくりして身体を起こした。


「…」


言葉が出てこず、ぶんぶん、と首を横に振るけど、快斗くんは困ったような、どこか悲しそうな顔して私から離れようとした。


「まっ、ままま待ってっ!」
「うわっ!?」


離れようとした快斗くんの服を掴んだら、急に引っ張られたからまた倒れ込みそうになった快斗くんが床ドン(正確にはソファどん)するような形で私の真上にきた。
その顔を見てられなくて両手で顔を覆いながら、


「ちっ、違うのだってそんなつもりじゃなかったから全然心の準備してなかったのにそんないきなりどうしていいのかわからなくてすっごい恥ずかしいのに快斗くん全然手慣れてる感じするしなんで私すっごい緊張してるのに私だけみたいでだってそんなどうしていいかわからないでしょ!?」


まくし立てるように(何故か)キレてしまっていた…。
そんな私を、


「ふはっ!」


快斗くんはまた柔らかく笑った。

.

prev next


bkm

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -