キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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アブない夏物語


お嬢様からの誕生日プレゼント


あおいちゃんが伊豆に行く当日。
さり気なさを装っても、絶対に園子ちゃんになんだかんだ言われると思って諦めた俺は、


「おや?快斗坊っちゃま、お出かけですか?」
「実施で変装術の仕上がり見てくる」


変装しちまえばいいじゃねーか、って開き直って伊豆に向かった。
あおいちゃんたちは探すまでもなく、


「ねぇ、キミどこから来たの?」

「おねーさん、めちゃくちゃスタイル良くないです!?俺めっちゃ好み!!」

「お友達と来てるの?俺も友達と来てるんだけど、」


次々とクソヤロー共に声をかけられていた(主に蘭ちゃんが)
だから言わんこっちゃねー。
女3人で海に行くなんて


「あ、ねぇ、君たち3人?俺たちも」


ギロッ


「ひぃ!?」


なんでこう、どいつもこいつも声かけて来やがるんだ。
普通に考えろよオメーら。
いっくら女だけで海にきてるからって、こんな可愛い子に男いねーわけねぇだろ!!


「…あれっ?こっちから来たと思ったけど…」


なんて思ってたら、1人でかき氷買い行ったあおいちゃんが見事浜辺で迷子になった。
…ったく、こんなところで1人になるなよなー。


「どーしたの?友達とはぐれた?」


小林太郎(24)伊豆が地元の社会人、ていう設定であおいちゃんの前に姿を見せた。


「あ、はい。確かこっちから来たと思ったんだけど…」
「これだけ人多いとねー。探すの手伝おっか?」
「いいんですか!?助かります!」


ありがとうございます、なんて言うあおいちゃん。
…これ帰ったらもっと人を疑うように言わなきゃだな。


「でもこの時期に女の子だけで海に来るとか危ないんじゃない?」
「なにが『危ない』んです?」


俺の言葉に、小首を傾げて聞いてきた。
なるほど、これは俺にだけするわけじゃなく、ただの癖なのか。


「ほら、例えば俺みたいなナンパするような男に絡まれたりとか?」
「えっ?お兄さんこれナンパですか!?」
「…いや、俺は違うけど、」
「ですよね?ほら大丈夫じゃないですか」


何が大丈夫なわけ?
なぁ、あおいちゃん、何が大丈夫なの?
これ俺がナンパ目的のクソヤローだったら、オメーまんまと引っかかってるぞ?


「あ!いた!らーん!」


なんて思った時、蘭ちゃんを見つけることができた。
あおいちゃんが蘭ちゃんとしっかり合流するのを見届けて、その場を去った。
… あおいちゃんには危機感が足りない。
これどーやって説得すりゃいいんだよ。
参ったなー、なんて思いながら、伊豆を後にした。
そしてあおいちゃんの伊豆旅行の翌日、あおいちゃんちに遊びに来た(というか心配で顔を見に来た)
そしたらなんでも園子ちゃんをナンパしてきた男が連続婦女暴行事件の容疑者で、園子ちゃんも危うく被害者になるところだったとか。


「園子ちゃん、大変だったな」
「そうだよー。園子がナンパされたいって言うから海につきあったのに、まさかレイプ魔にナンパされるなんて思わないじゃん!」


ほんと何もなくて良かった!とあおいちゃんは言うが…。


「『ナンパされたい』?」


俺の言葉に、


「『ナンパされたい』って何?」


スーッと俺からあからさまに視線を逸した。


「あおいちゃん?」
「…や、ほら、なんていうか、」
「俺の目を見て答えて。『ナンパされたい』って何?」


友達と海に遊びに行くのと、友達と海にナンパされに行くのとじゃ大きな違いだ。
あの女、次に会ったらただじゃおかねー、そう思った直後、


「や、だから園子が、あっ!そうそう、園子から快斗くんに手紙?あるんだよ!」


あおいちゃんが封筒を持ってきた。
…なんだこれ。
園子ちゃんからの手紙?
ビリッと音を立てて封筒を開けると、走り書きされた紙が真っ先に出てきた。
そこには


黒羽くんへ

あおいの貸し出しありがとー!
これからもよろしくね☆
遅くなったけど誕おめー!
喜んでくれると嬉しいなv

園子より


と書かれていた。
そしてその紙と同封されていたのは、


「え?なに?」


見た瞬間にバッ!と封筒の中に再び中身をしまった。
…なんだ今の!
見間違えじゃなかったら、旅館の浴衣着たあおいちゃんが寝乱れて、だいぶ際どい感じの姿になってる写真だったぞ!?
しかもこの封筒、今の写真1枚の厚みじゃねーし!
…あの女、俺を買収にかかったな!?


「…快斗くん?」


何があったのか不思議そうな顔で俺を見てくるあおいちゃん。


「あおいちゃん」
「う、うん?」
「許すのは、今回だけだからな?」


園子ちゃんの働きに免じて。
この封筒は家に帰ってからじっくり確認しよう、そうしよう。


「それ何が入ってたの?」
「んー…誕プレ?」
「え?園子から快斗くんに?」
「うん」


帰宅後中身を確認すると、寝乱れて浴衣がはだけてる写真の他に、俺には絶対に見せないような変顔で楽しそうにしてる写真、がっつり胸の谷間が写されてる写真、背中が開いた水着の後ろから撮った写真、そして、


「これめちゃくちゃ盛れてる」


すっげー柔らかい笑顔で笑うあおいちゃんの写真が添えられていた。


「さっすが鈴木財閥のお嬢様!わかってんねー」


園子ちゃんの誕プレは俺的にナンパどーのを帳消しにしてもまだプラスになるものがあったから、まんまと買収されてやることにした。
…もっとも、次はねーけどな。

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bkm

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