キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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アブない夏物語


露出問題


「快斗くん、眠い?電話切ろうか?」


怪盗キッドになると決めてから、やらなければいけないこと、覚えなければいけないことが多すぎて時間が足りない。
けどあおいちゃんとは別れないと決めたのであれば、今まで通り、何事もない日常にしなければいけない。
て、なると、削れる場所っつったら、睡眠時間なわけで。
俺にとっての睡眠導入剤にでもなり得そうな耳障りのいいあおいちゃんの声に、たまに意識が飛びそうになる時があった。
明らかに疲れている俺に不審がることもなく、無理しないでと言ってくれるあおいちゃんは優しいと思う。
そんな時だった。


「海?」
「そう。園子と蘭と行くの」
「女3人で?」
「うん、そうだよ」


あおいちゃんが眠気を飛ばす一言を放った。
…女3人で海?
いやいやいやいや、


「あおいちゃん、どんな水着着るの?」


それ場合によっちゃー、止める奴だ。
心が狭いと言われようが、女3人で海なんて。
思い浮かぶのは、あの日足ドンしてきた園子ちゃんと蘭ちゃんの顔で。


「え?んー…今持ってるのちょっとキツくなっちゃったから、新しいの買おうかと思ってるんだけど、」
「わかった、一緒に買いに行こう」


止めたら止めたであの子たちはまた何か言ってきそうだ。
そうなったら面倒だと思った俺は、いっそナンパされないようなダセェ水着着せるしかないと先手を打つことにした。


「これ可愛い!」
「それはちょっとなー…」
「え!?だ、だめ?」
「んー…それよりこっち!」


大量に展示されてる水着コーナーの端から順に見ていくことになって。
あおいちゃんが選ぶ水着は、うん確かに可愛い、似合うと思う、とは思うもののそこには全て、ただし俺と行くなら、という言葉がつくわけで。
なんでわざわざ他のクソヤロー共にそんな可愛い姿を見せなきゃならねーんだ、って、話で。
冗談じゃねー。
鴨が葱を背負ってるどころか自ら箸に醤油まで用意してるような状態で海に行かせられるかってーの!


「可愛くない!」


なんて思いながら水着選んでた俺に、ついにあおいちゃんがキレた。
…まぁ、当然だ。
確かに今日俺が薦めたのはどこの保護者だって感じの可愛いらしさゼロな水着なわけだから。


「だってさー、嫌じゃん。女3人で海なんて、絶対ぇナンパされんじゃん。そもそも他の男にジロジロ見られるよーな水着、着てほしくねーし」


目逸らしながらそう言った俺に、あおいちゃんは無言で。
チラッと伺うように視線を投げると、


「…」


すっげー目をキラキラさせながら俺を見てた。
…いや、なんで?


「ナ、ナンパは、わからないけど、でもほら、蘭がいるし何かあっても、ね?」


俺を説得にかかるあおいちゃん。


「それに私なんてジロジロ見られないから大丈夫だよ!」


ね?とあおいちゃんは言うけど、この子はわかってない。
オメー、その童顔の下にどこに出しても恥ずかしくないその身体がついてたら、俺が伊豆の男なら2度見どころか1度も逸らさずガン見するぞ。
私「なんて」じゃねーよ。
オメー「だから」見られんだっての、気づけよ…。


「はぁぁ…」


なんてこと、この子に言っても無駄だってのはもう十分知っている。
俺を「王子様」なんて言うこの子はきっと、俺がこんな思い抱えてるなんて気づかないだろう。


「今日3番目に見た奴」
「え?」
「譲歩できてアレ」
「…………3番目…?」


俺の言葉に考え込むような素振りをしたあおいちゃんを売り場まで連れて行き、さっきあおいちゃんが手に取っていた水着を渡した。


「ん」
「…あ、あー!これか!」


可愛いよね、なんて言うあおいちゃんに、より似合いそうな色を渡した。


「いいの?」


水着を受け取りながらそう聞いてくるあおいちゃん。


「だからー、譲歩できてそれ。あとはダメ。胸出過ぎ。布面積少なすぎ。絶対ダメ」
「わかった。これ試着してみる!」


ふわり、と笑って試着室に消えて行った。
…あーあー、あれ絶対ナンパされるな。
行く日合わせてさり気なーく俺も伊豆に行くとか?
…いや駄目だな、あおいちゃんだけならまだしもあの園子ちゃんが「あんたの彼氏ストーカー?」とか言いそう、あれは絶対言う(蘭ちゃんは思ってても口にしなそう)


「快斗くん、いる?」


試着したのか、顔だけカーテンから出したあおいちゃん。


「ど、どう、かな?」


俺も顔だけ試着室の中に入れて見るけど、


「サイズもピッタリだし、これに決めようかと思うの」


いいよね、と言って、俺が渡した水着を着て鏡の前で全身を写しているわけだけど。


「ちょっと背中開きすぎじゃね?」
「…似合わない?」
「いや似合うよ。…でもさー、」
「じゃあ着替て買ってくるからもう少し待ってて」


言いかけた俺の身体をトン、と押して試着室から追い出した。
…あれにするのかー。
前は隠したけど、まさか背中があんなに開いてるなんて思いもしなかった。
やっぱり伊豆に、いやでも園子ちゃんが、と頭を抱えた俺の前に、サクッと買ってきた水着の袋を持ってあおいちゃんが現れるのはもうすぐ。

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