NARUTO


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ゆびきり


8


「ユナ様もお疲れでしょうし、後は我々で、」
「あぁ、後は頼む」


宴もたけなわ、忍としてその姿はどうなんだろう?と言うほどの酔っ払いを量産した私たちの結婚式。
頃合いを見計らっていたようなタイミングで砂の忍が声をかけてきた。


「ユナ、行くぞ」
「…でも、」


さすがに先に帰るのは、と思っているのは私だけのようで、当然のごとく先に帰ろうとする風影様と、それについて行くようにと他の忍たちに身振り手振りで促され、1度頭を下げてからこの場を後にした。


「ナルトたち、すごく酔ってましたね」
「あぁ。うちの人間もかなり出来上がっていたからな」


少し先を歩く風影様の後をついて歩く。
夜道を少し乾いた、砂隠れの里特有の風が通り抜けていた。


「…」


黙々と、目的地を告げることなく歩く風影様。
…と、いうか、目的地ってやっぱり風影邸なんだろうな…。
それってつまり、


「あ、」
「え?」


そこまで考えたところで、風影様が立ち止まった。


「どうかしたんですか?」
「…すまん、こっちだ」
「え?…忘れ物ですか?」
「いや…」


今来た道を戻ろうとする風影様に忘れ物か尋ねたら、首のあたりを掻きながら、


「昨日引っ越したのを忘れていた」


ポツリ、と呟くように言った。


「引っ越し、ですか?」
「あぁ。…妻を娶るなら自分たちと一緒に暮らせるわけないと、テマリとカンクロウに追い出された」
「あぁ…」
「時間がなかったから元々あった家を改装しただけだが、オレじゃなくテマリが指示をしていたからお前も気に入ると思う」


そう言い終えるともう1度こっちだ、と言って歩き始めた。


「テマリ…お義姉さんや、カンクロウお義兄さんにちゃんと挨拶する時間なかったですね…」
「…」


私が言った言葉に、風影様は再び立ち止まり、私の顔を見据えた。


「…どうかしました?」
「いや…、オレと結婚したということはユナにとっても、テマリとカンクロウは姉と兄になるのかと…」


あぁ、そうか。
私がそうだったようにこの人もきっと、自分が結婚するって実感、なかったんだろうな…、って、そんなこと思った。


「そうですよ。私、一人っ子だからすごく嬉しいです」
「…テマリは少し、気が荒いかもしれんが悪気はない。カンクロウはあぁ見えて繊細だ。どちらにも言えることは世話焼きと言うことだ」
「素敵な兄弟ですね。いつも風影様を支えている」
「……あぁ、そうだな」


かつて、木の葉崩しが計画された中忍試験を受けなかった私が砂の三兄弟と初めて対面したのは、木の葉崩しの翌年に行われた中忍試験だった。
あの時すでに風影になろうと努力していたらしく、兄弟でのスリーマンセルではなく、皆個々にスリーマンセルを組んで中忍試験に挑んでいた。
…でも常に、テマリさんとカンクロウさんが、風影様を気にしていたことは、私から見てもよくわかった。


「ここだ」


ほんの少しだけ前なのに、もう随分と昔のことのような出来事を思い返していたら、あっという間に風影邸に到着したようだ。


「これがこの家の鍵だ」


そう言いながら、2つ持っていたうちの1つを私に手渡してきた。


「まぁ…お前の家でもある。好きに使ってくれ」


そう言って開いた扉の先には、確かに「新居」と言うより「中古」と言う感じがしなくもない、よく言えば味わいのある空間が広がっていた。


「ユナ、こっちだ」


ここが私の新しい家か、とどこか惚けながら見入っていたら、再び声をかけられた。
風影様は私が頷いたことを確認すると2階へと上って行った。


「ここから好きな部屋を選んでくれ」
「え?」


階段手前の扉に寄りかかりながらそう言った風影様。


「…」


そしてそのまま私の次の行動を待っているかのような沈黙が訪れた。


「…じ、じゃあ、この部屋で」


どうしていいのかわからず、風影様が立っている扉の向かいにある扉を指さしそう言った。


「そうか。オレの部屋はここだ。何かあったら呼んでくれればいい。風呂は1階にある。好きに使え」


オレの部屋、と言いながら自分が寄りかかっていた扉をドン、と叩いた風影様。
その言動に頷くことで返した。


「じゃあオレは明日も早いから寝る。後は好きにしてくれ」
「え?」
「…おやすみ」
「あ、はい、おやすみなさい…」


黙って扉の向こうに消える直前に、とってつけたように「おやすみ」と言った風影様に、慌てて返事をした。
その返事を聞いてか聞かずか、風影様が自分の部屋だと言った部屋の扉はパタリ、と閉まった。
…………え?
あれっ?
私今日、結婚したんだよね?
あれ、じゃあ初夜は??
なんて思いながら目の前を見ても、硬く閉ざされた扉しかなく…。


「…」


良いように考えれば、長旅で疲れた私に気を使ってくれてるのかもしれない。
そうだ、そう考えよう。
なんて、クエスチョンマーク飛び交う脳内を、半ば無理矢理納得させ、この部屋にする、と先ほど決めた部屋の扉を開けた。

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bkm

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