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その後、木の葉の里とは少し違う、砂隠れ形式の結婚式と言うものが滞りなく執り行われ、
「風影様、ユナ様、おめでとうございます!」
現在いわゆる二次会のようなところに突入した。
「風影様、おめでとうございます!」
「あぁ」
砂隠れに向かう途中、シカマルが教えてくれた。
何故、あの(私的には勘違い)求婚騒動からわずか2カ月で今日のこの日を迎えたのか…。
各地に大きな爪痕を残した忍界大戦。
大戦後、今だその傷が癒えぬまま忍界自体そのものの活気が失われていた。
そんな中、現役の「影」が、しかも他里から妻を娶ると言うのは木の葉、砂だけではなく忍界においても格好の話題。
だからこそ、落ち込んでいるみんなを活気づける意味も込めてあえてこの時期にしたのだと。
それが出来るだけのカリスマ性が、風影様にはあるのだと火影である綱手様が言っていたと教えてくれた。
「我愛羅、おめでとう!」
本当に、里全体がお祭り騒ぎになってるんじゃないか、と言うほどの盛り上がりに、シカマルから聞いたその言葉を思い出していた。
「…ふぅ…」
ところ狭しとみんなで大宴会、大盛り上がりな流れになったところでようやく、一応の主役である私は一息つくことが出来た。
そしてここでやっと、もう1人の主役(と言うか本来こちらがメインだろう)の風影様とゆっくりと話せる時間が来た。
「あの、風影様、」
目の前ではナルト始め木の葉からの忍と、砂の忍が酒を酌み交わしていた。
「…正直に聞くので、正直に答えてください」
「なんだ?」
この盛り上がりを見ると、それはひどく今さらなことなんだろうけど…、
「あの日のあの言葉…、本当にこういう意味が篭められていました?」
どうしても今、確認しておきたかった。
「…正直に答えるが、」
「はい」
「こういう意味を含んだつもりはなかった」
「………そうですよね、私もそう思ったんですが、」
「お前の水遁の術は目を見張るものがある。土地柄も影響しているのか、うちに水遁使いはあまりいない。だからお前に来てほしかった」
お酒の入ったグラスを傾けながら言う風影様にうんうんと頷きながら答えた。
「お前は?」
「え?」
「あの日の返事にこういう意味はあったのか?」
「………いえ、私もそういうつもりはなかったです」
目の前で繰り広げられている宴会の熱とは対照的に、私たち2人はお互いの顔を見ることもなく淡々と話していた。
「オレも1つ、聞きたいことがある。正直に答えてくれ」
「はい?」
「…お前はこれでいいのか?」
その問いに、この場に来て始めて風影様の顔を見たけど、風影様は目の前の騒ぎをその瞳に写しているだけだった。
「今ならまぁ…多少揉めるだろうがなんとかなるだろう。お前はどうしたい?」
ーお前はどうしたいんだ?ー
「…私、は、」
それに習って、私も目の前の光景を目に写した。
「いつか、誰かとこういうことになるなら、いつかが今であっても、風影様なら全く知らない人、ってわけじゃないし…、反論することもないかなぁ、と…」
「…」
忍界大戦時の負傷なのか、包帯を巻いているような人もいるのに、みんな元気だなぁなんてそんなことを思った。
「風影様は?」
「オレもいずれこうなるなら、見ず知らずのくノ一とどうこうさせられるよりも、お前であれば問題ない」
「…なら良かったです」
私たちはお互いの顔を見ないまま、話続けた。
「…あの、」
「うん?」
「もう1つ聞いていいですか?」
「なんだ?」
「もし、風影様が本当に求婚するつもりでいたなら、なんて言ってました?」
ちらりと視線を送った先には、
「…」
少し首を傾げ考えるような素振りをした風影様がいた。
「……………」
「あ!べ、別に特にないなら、」
「オレは、」
あまりに長い沈黙にもういいです、と伝えようとしたら、
「愛と言うものを知らずに育った」
風影様が口を開いた。
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bkm