■ 41
「…サボテンパーク?」
我愛羅に手を引かれながら市場を抜けしばらく右へ左へと曲がっていたら、目の前にでかでかと「サボテンパーク」と書かれている場所に出た。
「好きなの?この場所」
スタスタとそのまま中に入っていく我愛羅に、そう尋ねてみた。
「この場所が好きというより、サボテンを育てるのがな」
「えっ?」
「うん?」
私の問いに(私的には)意外な答えが返ってきた。
「…好きなの?サボテン」
「あぁ…まぁ、そうだな」
「…初耳…」
「前の家にオレが育てていたサボテンがいくつかあったんだが気づかなかったか?」
私の言葉に、今度は我愛羅が意外そうな顔をしながら尋ねてきた。
…前に我愛羅の実家にお邪魔した時はサボテンどころじゃなかったじゃない…。
なんて思うのはきっと私だけなんだろう…。
「だって今の家には1つもないよ?なんで?」
「何故と聞かれても困るが、今までの物はテマリとカンクロウに任せ、手ぶらで今の家に引っ越し結局そのままになっている」
ここまで買いに来る時間もなかったし、と言いながら我愛羅はそのまま歩き出そうとした。
「っ!……なんだ?どうした?」
その我愛羅の手を強く握り返すことで、彼の足を止めた。
「せっかくここに来たんだし新しいサボテン、買って帰ろう?」
「……」
私の提案に、我愛羅はジィっと私を見た後、
「いいのか?」
一言だけ聞いてきた。
「もちろん!何か欲しいものあるの?」
「…そうだな…。ここに来ること自体が久しぶりだし、買うとなればゆっくり見てから決めたいんだが」
「うん、じゃあそうしよう」
「…すまない」
私が販売用のサボテンが置いてある場所はどこかと辺りを見回し始めた時、我愛羅が申し訳なさそうに謝罪の言葉を口にした。
「何が?」
「お前がデートをしたいと言ってここに来たのにオレの都合で時間を割く」
「……それは当たり前のことじゃないの?」
「…そうなのか?」
「だって2人でデートしてるんだし、私だけじゃなくて、我愛羅がしたいこともしよう?デートなら、2人が楽しまないと…」
「…そう、いうものなのか?」
「……たぶん?」
「…そうか…」
お互いどこか頭に疑問符のようなものをつけながら会話をしていた。
それは恐らく、私だけじゃなく我愛羅もデートという経験が今までなかったからなのではないかと思う。
「はぁぁ…、凄いね…」
「うん?」
「どれも木の葉にはない植物ばかり」
その後、実際にサボテンを見に来たわけだけど、私が思い描く「サボテン」の形状そのものな植物もあれば、本当に見るのも初めてな植物もたくさんあった。
「そうだろうな。木の葉とは気候が違う」
「うん…、本当にそう思う」
その言葉を最後に、それはそれは真剣にサボテンを見始めた我愛羅。
…この人、本当にサボテン好きなんだろうなぁ、って。
私には(申し訳ないけど)どれも似たように見えるのに、1つ1つ観察するように見比べていた。
「決まった?」
「あぁ、これにする」
我愛羅は1つ鉢植えを持ちながら言った。
…やっぱり他とどう違うのかがわからない…。
「それも花を咲かせるの?」
「サボテンは上手く育てなければ花を咲かせない」
「そうなの?」
「あぁ。花を咲かせるために育て方にもコツがいる」
「へぇ…」
木の葉出身の私にはどんな花が咲くのか全く想像がつかないけど、きっと我愛羅は上手く咲かせるんだろうなぁ、なんて思った。
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bkm