NARUTO


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ゆびきり


40


「いいですか、風影様。デートする時はただ歩いては駄目ですよ?」
「どういうことだ?」
「ちゃんと手を繋いだり腕を組んだりしないといけない、ということです(なんかもうここまで来ると近所の子供の初デートを指南してる気分だ…)」
「…………それは、」
「はい?」
「どっちだ?」
「え?」
「手を繋ぐのか?腕を組むのか?」
「(俺が知るか)それは個人の好みですし、」
「そう言われると困る」
「…例えばですね、手を繋ぐのを好む人もいれば、腕を組んだり、腰や肩を抱いたりすることを好む人もいるんで、ユナ様はどれですか?」
「知らん」
「(だから少しは考えろって…!)…そうですね、ユナ様のご友人の木の葉のくノ一、春野サクラとか山中いのなどは腕を組んだり、肩を抱かれるのを好むタイプではないでしょうか?」
「ユナはそういうタイプじゃない」
「私もそう思います。実際のユナ様の好みはわかりませんが、まぁ…手を繋いでいたら無難じゃないですか?」
「手を繋ぐ…」
「いいですか、風影様。仮にも『デート』なら、1人でスタスタと歩いては駄目です。ちゃんと『連れだって』歩かなければ」




「ユナ」


今日どこ行くんだろうなぁ、なんて思っていたら我愛羅から名前を呼ばれたと思ったら手を差し出された。
これはつまり、そういうことなんだろうな、と思い、


「うん、行こう」


その手を取って歩き出した。
我愛羅に手を引かれるまま歩き出してしばらく、


「…市場?」


行商人たちの市場が行われてる場所に出た。


「一昨日から5日間、土の国の行商隊が市を出している」
「土の国!私行ったことないんだ」
「…見てみるか?」
「うん!」


我愛羅の言葉に、私たち土の国から来た行商人の市場に向かった。


「…す、ごーい!木の葉とも砂とも違う!」

露天に置かれている商品はどれも今まで見てきたものたちとはまた違った味わいある物たちばかりだった。




「おい、あれ。あそこの女連れ、風影じゃないか…?」
「赤い髪に額に愛の文字、間違いないな。…噂には聞いていたがほんと若造じゃねぇか」
「だがかなりのやり手で忍連隊の連隊長までやって、衰退の一途を辿っていた砂隠れを持ち直させたって話だからただの若造じゃねぇだろ…」
「あの隣の女は誰だ?」
「知らないのか?…茶色い髪に蒼い瞳、あれは『風影様』が他里から娶った奥方のユナ様だろ?あの服は風の国じゃない、火の国…木の葉隠れの衣装だ」
「火の国の奥方か…。じゃあ、まぁ少し贔屓にしてもらうか」




「わ、これなんだろ…」
「それはカンザシですぜ、奥さん」


私の独り言に、露天商が返事をした。
その返事に、思わずその人に目をやった。
…ここに来てユナ様と呼ばれることには慣れたけど、「奥さん」なんて呼ばれたのは初めてかもしれない…。
そうか、他人から見ても私たちちゃんと夫婦に見えるんだ…。
なんて、いきなりの言葉に少し顔に熱が帯びてきた。


「ほら、ボーッと立ってないでこれを奥さんの髪に挿して!」
「あ?あぁ…」


露天商の勢いに押された我愛羅は、差し出されたカンザシを手にして私の髪に挿した。


「痛っ!」
「す、すまない!…こうか?」
「…我愛羅、もう少し優しく挿してくれないと痛い…」
「何!?…ならばこうか?」
「…さっきよりはマシになったけど…」
「ははっ!風影様は不器用だと見える!」


私たちのやり取りを見ていた露店商の言葉に、こんなことするようなことがなかったからだ、と我愛羅は呟くように言った。


「なら教えてさしあげます。ほら、奥方の髪を持って!」


私たちの返事を待たずに、ほらほらと手で急かしながら話しを進める露店商。
奥さんは動かないでくださいよ、と言われ、我愛羅に背を向ける格好で立った。


「その髪の束をこんな感じにして、」
「…こうか?」
「あぁ!違う、違う!女性はもっと優しく扱わないと嫌がられて逃げますぜ?」
「それはっ、…困る」
「ははっ!それじゃあもっと優しく、こういう感じに、」
「…こうか?」
「そうそう!で、ここのところにこういう風に挿すんです」
「……………こ、これでいいのか?」


我愛羅のその言葉とほぼ同時に、いつの間にか私たちを囲むように出来ていた人集りから、おぉー、と言う歓声があがった。


「上手い、上手い!さすが風影様だ!」
「…ユナ、痛くないか?」


髪にカンザシを挿すだけで人集りを作るなんてこの人すごいな、なんて、熱を帯びた頬を抑えていた時、我愛羅が私に聞いてきた。


「うん、大丈夫」
「…店主、これを貰う。いくらだ?」
「えっ!?我愛羅が買わなくてもっ、」


これだけ人集りを作ってしまった手前、買わないなんて選択肢があるとは思えない私は後で自分で購入するつもりでいたため、我愛羅の言動に思わず声をあげていた。


「オレがお前に使ってほしいと思ったんだ。よく似合ってる。…いくらだ?」


我愛羅の言葉に露店商は、ちょっとちょっと、と手招きをした。
2人でその露店商に近づくと、ひそひそと話し始めた。


「それはさしあげます」
「いや、そういうわけには、」
「いいえ、貰ってください。…よく周りを見てくださいよ!『あの』風影様が奥方様にカンザシを挿してあげるパフォーマンスを見せてくれたからうちの店の前すごい人集りじゃないですか!」
「…オレは別にパフォーマンスしたわけでは、」
「わかってます、わかってます!もし風影様がタダでは貰えないと仰るなら、」
「なんだ?」
「今後もぜひ、定期的にうちの行商隊をご贔屓に!」
「…」


あぁ、結局それを嘆願したかったのか、と思った。
返答に困ったらしい我愛羅は、一瞬私を見てきたから、私も目で合図した。


「…わかった、考慮する」
「ありがとうございます!……さぁさぁ、見ていただろう!?風影様が奥方様に差し上げたカンザシを売っている店がここだぁ!欲しい人間は早い者勝ちだぜ!」
「見せて!!」
「私にもっ!」
「はいはい、押さない、押さない!」


露店商の声にあっと言う間に彼の周りには、若い女性が群がった。
その姿に呆気に取られていたわけだけど…。


「他里でも市を見たことはあるが、やはり砂漠を越えてくる行商隊は逞しいな」


我愛羅がポツリと呟いた。


「そう、だね」
「…オレたちも次に行くか」
「うん!」


一気に人が増えた通りで逸れないように、もう1度手を繋いで歩き出した。



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