NARUTO


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ゆびきり


3


「ユナー!我愛羅と結婚ってどういうことだよ!?俺は我愛羅からそんな話一ッ言も聞いてないってばよっ!!」
「ナルト…。うん、たぶん聞いてないと思う…」
「だいたいお前ら結婚するほどの仲っていつからそんなだったんだよっ!」
「それは、」
「それは!?」
「私が知りたいんだけど…」
「はぁっ!?」


そもそも風影様と話すようになったのは、私が火影様の使者として砂隠れの里に行くようになったここ1年ちょっとの話で、そんな短期間の使者としての滞在期間だけでどこをどうやって結婚まで行き着くことになったのか私自身が知りたいところだ。


「は!?なんで!?だって結婚て、はっ?なんでだってばよ!?」
「なんでって、」
「なんでって!?」
「決まっちゃったからこのままでいいかなぁ、って」
「はぁぁ!!?」


この時ナルトから心底心配されたことはきっとずっと忘れないと思う。


「え!?自分で歩いて行きます!」
「そんなことさせられるわけないだろう!?ただの砂の忍に嫁ぐわけじゃない、風影のところにいくんだぞ?1人ふらふら行かせたら木の葉の威信にかかわる!」
「…別にふらふらと行くわけじゃ…」
「砂隠れに行くにあたりそれなりの護衛をつけて行ってもらうからな?」
「ご、護衛もつけるんですか!?」
「だから1人で行かせるわけにはいかないと言ってるだろうが!」


サクラと違って、火影である綱手様と密に関わるようなことがなかった私は、綱手様の言葉に異論を唱えられる身分でもなければその度胸も備わっていなかった。
だからまぁ…、自分のことではあるけど「里の威信に関わる」と言う綱手様に全てをお任せしていつも通りの日常を過ごしていたわけだけど…。


「ねぇ、ユナはこう…マリッジブルーって言うんだっけ?そういうのあるの?」
「サクラ…。普通はあるのかもしれないけど、」
「けど?」
「今だ自分が結婚するんだって感じが全くしないからなぁ…」


綱手様筆頭に、周囲が慌ただしく動いているだけで、当事者のはずの私は蚊帳の外のような扱いだからか、どこか他人事のような時間を過ごしていた。
そしてあっという間に時は流れ、砂隠れの里に「嫁ぐ」日が来た。


「まさか本当に『輿入れ』で砂の里に行くなんて…」
「火影の命令なんだから仕方ねぇだろ!」


どんなに早くても木の葉から砂隠れの里まで3日かかると言うのに、わざわざさらに遅くなる輿に乗せられ、1週間かけて砂隠れの里へ向かった。


「よーやく、明日砂隠れに着くな。やっとこのふざけた任務から解放されるぜ」


綱手様が選んだ「護衛」は、綱手様の好意からくるものだとよくわかる人選だった。


「シカマル、あんたそればっかりね」
「いのはいいよなぁ…、ただの護衛なんだし。それに比べてなんだってオレとチョウジが輿持ちんだんよ」
「俺は砂隠れの美味い飯食えるならいいかな、って」
「お前、そんなのに釣られるなよ!」
「まぁまぁ、そう愚痴るな、って!風影の結婚、てなれば各地から権力持ったイケメンが来るだろうし怒んない怒んない!」
「…オレ、イケメンに興味ねぇし…」
「でもテマリさんはいるよ、確実に」


砂隠れの里へ向けた道中最後の夜。


「なっ、なんであの人が出てくんだよ!?」
「あれっ?違うの?」
「あの人は別にそんなんじゃねーし!ただサバサバしてて他の女よりも話が合うだけじゃねぇか」
「何よそれ?私やユナがネチネチしてるみたいじゃない!」
「私はそんなネチネチしてないと思うけど…」
「は!?じゃあ何!?シカマルあんたそれ私がネチネチしてるって言ってるの!?」
「んなこと一言も言ってねーだろ!」


みんなでまるで…子供時代に戻ったような錯覚に陥っていた。
忍界大戦の爪痕は大きく、どこか里全体が沈んでいたような日々から、久しぶりにみんなで昔に戻ったかのようにきゃーきゃー騒いでいた。
そんな中、昔のようにふわりと空気のように傍にやってきたヒナタが話しかけてきた。


「ユナはこれで良かったの?」


ヒナタはたぶんきっと、アカデミーにいた頃1番仲が良かったコ。
少なくとも私はそう思っているし、今もそうだと思っている。


「うん、なんで?」
「…ううん、ユナが良いならいいんだ」
「でもヒナタと離れるのは寂しいかも」
「大丈夫だってばよ!」


ヒナタと話しているとナルトとサクラがやってきた。


「我愛羅はさ、まぁ…『家族』ってーの、あんまり知らねぇかもしれねぇけど、でも良い奴だし!あの歳で『風影』になれるくらいすっげぇ努力が出来る奴だから、寂しいとか思ってる暇ないくらい、上手くやるってばよ!」
「出た…、ナルトの根拠のない自信。こういうことに関しては特に、いい加減なこと言うもんじゃないわよ、あんた」
「サクラちゃんひっどい!いい加減じゃないってばよ!我愛羅はほんとに、」
「はいはい、努力家の良い奴なんでしょ?でもねぇ、男から見た男と、女から見た男って違うからねぇ…」
「でもサスケくんは男から見ても女から見てもカッコいいと思うけど。今頃どこらへんにいるんだろうね?」
「………さっきのシカマルの時といい、あいっかわらず、相手が言葉を詰まらせるような一言言うのねユナは」


ははっ、と渇いた笑いを漏らしながらサクラが言った。


「ごめん、悪気はないんだけど、」
「それだけ周りをよく見てるってことだってばよ!」


ニシシ、と昔と変わらない顔でナルトが笑った。


「そう、かな?」
「そうそう!じゃなきゃ相手が何をどう見てどう感じてるか、ってわかんねぇってば」
「まぁ、それは一理あるかもね」
「だろだろ?ほら、サクラちゃんもこう言ってるし?ユナは相手をよく見てるって!」
「うーん、」
「そういう風に、さ、」


それまでナルトが冗談のように話していた声色が急に真面目になった。


「…そういう風に、我愛羅のこともよく見てやってくれよな?…アイツ俺と同じだからたぶん…『家族』ってののつきあい方も手探りだと思うし」


ナルトのその一言に、サァーっと渇いた風が夜空を舞った。


「…ナルトは本当に風影様を思ってるんだね」
「おぅ!俺ってば我愛羅と約束したからな!いつか俺が火影になったら2人で盃汲みかわそう、って!」
「あ!そういや6代目にカカシ先生指名するって話あれ本当!?」
「は!?カカシ先生!?マジかよ!!シカマル何か聞いてるか!?」
「あー…、なんかそろそろ引退がどーとか言ってるな、確かに。とりあえずユナの結婚の段取りは独身男のカカシ先生には任せられねぇからそれが済むまでは、って話だったけどこれが済んだら火影も代替わりするかもな?」
「…カカシ先生が6代目…!なら俺は7代目火影を目指すってばよ!」


ナルトが決意を新たにした時、隣にいたヒナタが私の服をツンツンと引っ張ってきた。


「さっき話が途中で終わっちゃったけど、」
「うん?」
「手紙、いっぱい書くね」
「…ヒナタ…」
「火影様にも言って、砂の里に行けるような任務が出来るようにしてもらうから」
「…私も手紙、書くね」
「うん!楽しみにしてるね」


自分自身、本当に結婚するのか今だ実感がわかないような部分があるけど…。
それでも私の「結婚式」というものの前日は、すごく久しぶりに、大戦終結後初めてみんな揃って笑いあった日だった。

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