■ 38
我愛羅はどこに連れて行ってくれるんだろう。
家事も全て済ませた私は、そんなこと思いながらベッドに潜りこんだんだけど…。
「ユナ」
「…んー?っ!?」
さぁ寝よう、と思って横になろうとしたら、先にベッド入っていた我愛羅が腕を引っ張り私を抱きしめた。
「…」
「…」
「…我愛羅?」
抱きしめては来たものの、そのまま何をする気配もない我愛羅に声をかけた。
「昨日、」
「うん?」
「この部屋にいなかった」
「…あぁ…」
向かいあって横になっているため、我愛羅の顎のあたりに額をつけ、背中に手を回しながら呟いた。
あの状況で同じベッドに寝るなんて考えられなかった私は、今は名ばかりとなりつつある私の部屋に逃げた(あぁ言う時便利だと思うからやはりあの部屋は必要だと思う)
「何?寂しかった?」
くすくすと笑いながら聞く私に、
「寂しい寂しくないの問題じゃない。お前がこの部屋にいないと落ち着かない」
我愛羅ははっきりと答えた。
…この人は口下手なわりに、こうやって答えに困ることを言ってくるのは何故だろう…。
「…お前の肌は滑らかだな」
私がなんて答えようか考えていたら、我愛羅が私の首を指でススーッとなぞるように触れながら言った。
「…っ、…そう、かな?」
「あぁ。女とはこういうものなのかと思う」
その行為に少しゾクリとしながら聞いた私に気づいていにのか、我愛羅は何も変わる様子もなく呟くように言った。
「柔らかくて滑らかで触っていて飽きない。まるで、」
「…んっ…」
「うさにゃんを触っているようだ」
「………」
再び背筋がゾクっとした私を一気に現実に引き戻す言葉が聞こえた。
…わかってる。
この人は決して悪気があって言ってるんじゃない。
…でも例える物、間違ってない?
「私がうさにゃんなら、我愛羅はくましゃん?」
私なりの嫌味をぶつけたところ、
「オレはあんなに丸くない」
あっさりと否定の言葉が返ってきた。
…私だってうさぎのように丸くないわよっ!
って、言いたいところだけど、この人きっとわかってない。
確かにうさにゃん、肌触りすっごい良いけど!!
でも絶対その例えは違うと思う!
一体この人にどう説明しようか頭を悩ませた。
「…お前は本当にうさにゃんのようだ」
「え?」
「柔らかくて滑らかで、白くて穢れがない。…お前も忍びであるなら、汚れ仕事もやってきただろうに、そういうところに堕ちていない。本当に、あの白いうさぎのようだ」
だから共にいると落ち着くと我愛羅は言った。
その言葉に返答のしようがない私は、我愛羅背中に回した手の力を強めた。
「ユナ」
「うん?」
「…おやすみ、良い夢を」
そう言って我愛羅は私にまじないをかけてくれた。
…だからなのか私はその日、珍しく夢を見た。
広い砂漠にぽつんと立っているくまのぬいぐるみの夢。
ぬいぐるみだから表情はずっと同じままだけど…。
でもずっと、寂しい寂しいって泣いていた。
いつの間にか、くまの仲間が増えていたけど、でもやっぱりまだどこか寂しいって嘆いていた。
仲間が増えたのはすごく嬉しい。
だけど自分だけを愛してくれるコがほしいんだ、って嘆いていた。
そこに真っ白いうさぎがやってきた。
うさぎは言う。
ごめんね、砂が多くて上手く歩けず遅くなっちゃった。だけどようやく見つけたよ。
くまは相変わらず表情が変わらない。
だけど、嬉しそうにしていたのが、私にはわかった。
「(…眠りながら笑ってる…。このまじない本当に効くな…)」
我愛羅に見られていたとは思いもしない私は、夢の中で手を取るうさぎとくまのぬいぐるみを、砂漠を吹き抜ける風になって見つめていた。
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bkm