NARUTO


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ゆびきり


34


「行ってくる」
「うん、いってらっしゃい」


我愛羅と結婚して3ヶ月と少し。
ようやくとでも言うのか、世間一般の「新婚夫婦」をしているんじゃないかと思う。


「あ、ユナ様だー!」
「こんにちは」
「こんにちはー!」


少し、心にゆとりが出たからか、ここでの生活の行動範囲も少しずつ広がり、顔見知りも増えきた。


「ユナ様、この間教えてくれた、」
「わぁ、すごいね。もう出来るようになったんだ!」


ここ砂隠れで流行っている、かつて流行っていた遊びは木の葉隠れで流行っていた遊びとはやっぱり違うようで、私が教えてあげた木の葉の遊びが大人気になり、もっぱら子供たちから声をかけられることが増えていた。


「あぁ、ユナ様。今日は新鮮な野菜が入ってきて、」
「本当ですか?じゃあ買って帰ろうかな?」


他里出身の私に対外的な重要任務は無理でも、これなら忍術学校の教員、なんて仕事も与えてもらえるんじゃなんて思いながら、日々を過ごしていた。


「風影様だ!」


今日も夕飯何にしようかな、なんて思っていたら、里内の視察をしている我愛羅を見つけた。


「ユナ」
「お疲れ様です」
「こんなところまで買い物に来てるのか…」


視察中の我愛羅を見つけた私より、私を見つけた我愛羅の方が驚いていた。


「風影様、聞いて聞いて!これ、ユナ様が教えてくれたんだよ!」
「ほぅ…」


私が教えた木の葉隠れの遊びを、我愛羅にも見せる子供たち。
我愛羅はその子供たちを目を細めて見ていた(今日はカンクロウ義兄さんは一緒じゃないようだ)


「風影様、」
「あぁ、今行く。…皆、よく学びよく遊べ」
「「はい!」」


去って行く直前、こちらを向いた我愛羅に軽く頭を下げたら、我愛羅も頷くように1度首を振って歩き出した。


「…っ、かぁっこいい!」
「俺も風影になるんだ!!」


いつの時代、どこの里でも長と言うのは憧れの対象なのだろう。
…なんだか昔のナルトを見てるみたいだ。
なんて思っていたら、


「でも、」
「うん?」
「…あたしは、ちょっとこわい…風影様」


ポツリ、とそう呟いた女の子がいた。


「怖い?どうして?」
「…だって、」
「うん?」
「風影様、全然笑わないもん…」
「あぁ…」


確かに、我愛羅のあの表情は、このくらいの子たちには怖いと言う対象なのかもしれない。


「あぁ見えて風影様も可愛いところあるのよ?」


見た目は怖いかもしれないけど、怖いのは見た目だけで、中身は優しい人なんだよって、この子にもいつか、伝わったらいいと思う(物凄く鈍いところがあるのは否めないけど)


「例えば?」
「例えば…、あぁ見えて風影様、くまのぬいぐるみと一緒に寝てるんだから」
「…えっ!?く、くま?」
「うん」
「う、うっそだー!風影様はすっげぇ強くて俺たちの憧れの人なんだからぬいぐるみなんかと一緒に、」
「あら?信じないの?でも嘘じゃないわよ?本当にこれくらいのくまのぬいぐるみと」
「ユナ!」


これくらい、と手で大きさを教えようとしたら、さっき立ち去ったはずの我愛羅がいつの間にか戻ってきていた。


「まだいらしたんですか?」
「……木の葉の使者から預かったお前宛の手紙を渡すのを忘れたと思ってな」


特に非難することなく、ただジーッとこちらを見ていた我愛羅に何事もなかったように話を振ったら、我愛羅が持っていた封筒を取り出して来た。


「わざわざすみません。ありがとうございます」


意識しているわけではないけど、外ではなんとなく、「風影様」に敬語で話していた。


「…なんだ?」


ヒナタからのいつもの手紙かななんて封書を見ていた私は、我愛羅を見つめていた先ほどの女の子の存在に気づかなかった。


「か、風影様、は、」


その子は少し声を上ずらせながら、


「…ぬいぐるみが好きなの?」


上目遣いで我愛羅に尋ねた。


「………」


我愛羅の沈黙に、周囲に(主に大人に)緊張が走ったような気がした。


「オレはぬいぐるみが好きなんじゃない。あのくましゃんが好きなんだ」


沈黙の後、そう言った我愛羅に女の子の顔がパアッと明るくなった。


「くましゃんて名前?」
「あぁ」
「あたし!うさぎのぬいぐるみ持ってるんだよ!名前は『みーちゃん』!」
「そうか。ユナは『うさにゃん』と言うぬいぐるみを持ってる」
「ほんと!?あたしうさぎだーいすき!」
「ユナと一緒だな」
「うん!」


…私特別うさぎが好きってわけじゃないんだけどな…。
なんて思いながらも、2人の微笑ましいやり取りを見ていた。




「(風影様がくまのぬいぐるみ!?)」
「(人は変わると言うが『あの』砂漠の我愛羅が風影を目指すようになった頃から思ってはいたが、ご結婚なされて本当に変わられた…)」
「(まさかぬいぐるみを…しかも『くましゃん』…)」
「(風影様にくましゃんやらうさにゃんなどと呼ばせるとはユナ様恐るべし…!)」
「「「(やはりあぁ見えてユナ様はお強いのかもしれん…)」」」




「ユナ様、野菜どうします?」
「そうですね…。じゃあ、人参と、」


我愛羅が去ってからそそくさと買い物をし、早く帰って届いた手紙を読もうと家路についた。

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bkm

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