■ 33
「あれから考えていたが、」
うさぎのぬいぐるみを貰ってから2日後の夕食で、我愛羅が話を切り出した。
「全く思いつかん」
「うん?」
「くまにはどんな名前がいい?」
「……」
真剣に。
ものすごーーーーーーく真剣に聞いてくる我愛羅に一瞬腹筋が震えたのは気のせいじゃないはずだ。
「ずっと考えてたの?」
あぁ、と短く答えながら頷いた我愛羅。
…どうしよう…。
「そもそも、」
男の人に「可愛さ」と言うのを感じたのは初めてかもしれない…。
「何故あれは『うさにゃん』なんだ?」
「え?」
これが母性と言うものなのか、なんて思っていたら、我愛羅が疑問に思っていたらしいことを口にした。
…そう言えばあの子も名前決めてなかったけど、結局「うさにゃん」になったのか…。
「なんで、って…」
それまでは「うーちゃん」て名前だったけど、当時変化の術を覚えたてでおもしろくてそこら中にかけまくっていた私の術が失敗して、元はうさぎなのに猫耳になってしまって戻らなくなったから「うさにゃん」になったなんて言えない…。
「うさぎだから?」
「…」
私の言葉に我愛羅は少し顔を顰めた。
「ならばくまなら『くまにゃん』か?だがそれだとしっくりこない」
この人は私を笑わせたいんだろうか…?
いやでもひどく真剣に言ってきてるし、真面目に聞いてるんだろうなぁとは思うけど…。
どう思う?と言う感じで私に話を振って来る我愛羅。
「そうだなー…、くまだから『くましゃん』?」
「…あぁ、それなら『くまにゃん』よりはしっくりくる」
うんうん、と頷く我愛羅についに噴き出した。
「なんだ?何がおかしい?」
「んーんー。…幸せだなぁ、って思って!」
私の言葉に我愛羅は一瞬驚いた顔をしたけど、軽く目を伏せながらそうか、と呟いた。
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bkm