NARUTO


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ゆびきり


32


「ここだと邪魔にならない?」
「あぁ、大丈夫だ」


夜、寝室に我愛羅から貰ったうさぎのぬいぐるみを持って行き、本棚から移動させたくまのぬいぐるみと共に枕元に置いた。


「ふふっ、可愛い」


少し古びたくまのぬいぐるみと、真っ白いうさぎのぬいぐるみが無事ベッドの上に自分の場所を確保した。


「名前、つけてた?」
「…名前?くまにか?」
「うん。私小さい頃うさぎのぬいぐるみに『うさにゃん』てつけてたけど我愛羅は?」


ベッドの上にあがっていた私の隣に来た我愛羅にそう聞くと、我愛羅はしばらくぬいぐるみを見た後で、ない、とだけ答えた。


「ない、って、つけてない、ってこと?」
「あぁ」
「…男の子って、そういうもの?」
「何が?」
「え?うーん…私は、名前があった方がこう…親しみが湧くと言うか…そういうのあるんだけど、男の子ってそういうの、ないのかな?って…」


私に視線を投げてきた我愛羅を困ったように見ながら答えた。


「名前など個を呼ぶ時に使うだけだろう」
「…いや、それだけじゃないと思うけど…」
「他に何がある?」
「え!?う、うーん…」


その言葉に、困った「ように」ではなく、本当に困った顔で我愛羅を見た。


「ほら、例えば我愛羅の名前にだって意味はあるでしょう?」
「…意味…」
「そう。名前をつけてくれた人が込めた想い、っていうのか…、そういうのがあるから、個を呼ぶ時に使うだけじゃなくて、名前をつけたり、名前を呼ぶってその人や物を尊重するって言うか…うまく言えないけど大事なことでしょう?」
「…」


私の言葉に、我愛羅は寝るためにあがったはずのベッドの上胡座をかいて考えこむような仕草を見せた。


「我愛羅の名前の意味って何?何か聞いてる?」


私の言葉に、


「『我を愛する修羅』」
「え?」
「自分だけを愛し、自分だけのために戦う。それがオレの存在理由になる。…そういう意味だと聞いた」


顎に手を充てながら答えてくれた。


「…それ誰がつけたの?」
「母と言う話だ」


相変わらず顎に手を充てながら言う我愛羅を見ながら、驚きを隠せずにいた。
…修羅ってだって…。


「それ、」
「うん?」
「…お母様から聞いたの?」
「いいや。…オレの世話役だった、母の兄弟から聞いた話だ」


私の問いに私の顔を見ながら我愛羅は答えた。


「…その人信用出来る人?」
「どうだろうな、今となってはわからない」
「どういうこと?」
「父の差し金でオレを殺しに来て、オレを憎んでいると言って死んでいったから真意はわからない」


我愛羅は昔を思い出しているかのように、くまのぬいぐるみをジッと見ながら腕を組み口にした。
あぁ、そうだった…。
この人はナルトと同じで…、ナルト以上に孤独な時を過ごしていたんだ…。


「ならそれはきっと嘘」
「…どうしてそう思う?」
「だって、自分の息子につけた名前なんだもの」
「……意味がわからない」


少し、眉を顰めて我愛羅は私を見てきた。


「自分『だけ』を愛せなんて寂しい生き方、母親が子供に願うわけない」
「…」
「たぶんお母様はこう言いたかったんだと思う。我『を』愛する修羅ではなく、我『が』愛する修羅って」
「我『が』…?」
「あ!でも子供につけるなら『修羅』って言うのも変だからそこも別の言葉で、」
「いや…。修羅と言うのはオレの中に封印した尾獣、守鶴のことを指している」
「あぁ、じゃあやっぱり『我が愛する修羅』なのかな?…我が子の体内に封印した尾獣すらも想えるほど我が子を愛する、って意味じゃないの?」
「………」


私がそこまで言うと、我愛羅は軽く拳をつくった左手を口元に持って行った。


「考えたことがなかった」
「そう?素敵な名前だよ?いっぱい呼んであげないと」
「……お前といると、」
「うん?」
「母とはこう言うものなのかもしれないと思う時がある」


軽く目を伏せながら我愛羅はそう言った。


「…ごめん、我愛羅」
「うん?」
「それ褒めてない」
「何?」


私の言葉に我愛羅は驚いたように私を見てきた。


「オレは褒めてる」
「うん、そんな感じはしたけど、全然褒めてない」


新婚3ヶ月。
ようやく夫婦としての生活を確保出来た矢先に、まさか『母』と言う存在と重ねられるとは思いもしなかった…。


「気分を害したなら謝る」
「いや、気分を害したと言うか…」
「すまない、そういうことはよくわからない」


ごにょごにょと口籠っていった私に対して、本当に申し訳なさそうに言ってきた。


「ねぇ我愛羅、聞いて」


あぁ、そうか…、って。


「私は我愛羅の奥さんで、お母さんじゃない」
「当たり前だ」


この人は、閉ざされた幼少期を過ごして来たからいろいろなことが不器用でいろいろなことが純粋で真っ直ぐな人なんだ。


「そして私はまだ『お母さん』になったことはない」
「そうだな」
「お母さんになったことない女性に、しかも自分の奥さんに『お母さん』みたい、とかは、褒め言葉じゃないんだよ」
「…そうか…、気をつける」
「うん」


思わず頭を撫でた私に、我愛羅は軽く目を伏せた後で困ったように笑っていた。

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