■ 29
いつの間に寝てしまっていたのか、目が覚めると、
「…」
見慣れない部屋に1人で寝ていて。
室内を見回すと、昨夜見た大量のエロ本が鎮座している本棚が目に入り、そこで一気に我が身に起こった出来事が思い起こされガバリ!とベッドから飛び起きた。
ら、
「!?」
当然と言えば当然なんだけど、素っ裸な自分の体が飛び込んできた…。
服を着ようと慌てて自分の服を探すと、
「…畳んである…」
昨夜脱ぎ捨てた(正確には脱がされた)はずの服が畳まれソファの上に置かれていた。
完全に寝坊だと急いで服を着て1階に駆け下りた。
「…なんだ、起きてきたのか?」
バタバタと駆け下りる私に気づいた我愛羅は、出掛ける直前だったのか玄関手前で私の方を見ながらそう言った。
…辛うじて出掛ける前に間に合ったようで本当に良かった…!
「ごめん、寝過ごして、」
「まだ寝てていい」
「や、そういうわけには、」
すっかり身支度を整え出かけようとする夫を見送ることなく、自分だけ高いびきをかいていたらそれはもう嫁としてどうかと思う。
「ユナ」
「うん?」
慌てて起きてきたから、寝癖とかどうなっているのかわからず前髪を撫でつけるように触っていたら我愛羅に名前を呼ばれた。
直後、
「!?」
「……新婚夫婦はこうするものだと本で読んだ。おはよう」
「…お、はよ…」
我愛羅は少し体を屈めて私にキスしてきた。
…昨日の今日でガラリと雰囲気が変わってしまった私たちの関係に、軽く唇を噛んだ。
「今日は早くは帰って来れない」
「…うん、わかってる」
「行ってくる」
「いってらっしゃい」
そう言って我愛羅は出て行った。
…なんだか本当に不思議で堪らない。
昨日の朝なんて我愛羅ボイコットの最中だったはずだ。
それが翌日にこうなっているなんて誰が予測出来ただろう。
「…とりあえず、シャワー浴びようかな…」
朝から何を、なんて言われそうだけど、昨日の汗をサッと流すところから1日を始めようと浴室に向かった。
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bkm