■ 27
「…」
「…」
フッと視線を上げた先で目が合った我愛羅と私は、しばらくどちらも言葉を発することはなく、ただお互いを見つめていた。
「…」
見つめていた、と言うより少なくとも私は次にどうしたらいいのかわからず固まっていた、が正しいような気がする…。
だけど、我愛羅と結婚する、となった時、こうなることはわかりきっていたことだし、それに対して私は…。
「さっきも言ったが、」
長い沈黙を破って我愛羅が口を開いた。
「オレは女を抱いたことがない。お前が初めてだ」
我愛羅は軽く目を伏せながら続けた。
「これからお前に触れるが、嫌だったり違っていたら言ってくれ」
私を見ることなく、我愛羅はそう言った。
…そんなこと言われても…。
そう思った時、さっき旧風影邸でシカマルが言った言葉を思い出した。
もっと本音で話し合え、って…。
その言葉が脳裏に過った瞬間、唇を1度キュッと結び、我愛羅に気づかれないように自分自身に喝を入れた。
「…私も、」
「うん?」
自分が思っている以上に緊張してたようで、少しだけ声が上擦っていた。
私の言葉に、我愛羅は再び私を視界に入れた。
「何が正しくて、何が違うのかわからないし…」
「…」
「でも、」
「『でも』?」
そこまで言って、スーッと1つ息を吸い込んだ。
「我愛羅に触れられることを、嫌だって思うわけないもの」
「…」
私がそう言うと、我愛羅は1度視線を彷徨わせるように私から逸らした。
直後、
「…っ、」
腕を掴まれ口づけられながらベッドに押し倒された。
初めてのキスは、コツンと歯と歯がぶつかって、少しだけ前歯に痛みを感じた。
「ユナ」
押し倒されたベッドの上で、我愛羅は私の頬を両手で包み込み何度もキスしてきた。
それはたぶん…とてもぎこちない仕草なんだと思う。
服のボタンにかける手も、肌蹴た服の奥へと伸ばす手も、全てがぎこちなく、全てが温かかった。
「く、すぐ、った、」
「…嫌か?」
「………そ、いう、わけじゃ、」
「そうか」
「っ、…んっ、」
自分でも驚くほど鼻にかかった声…にもなっていない、吐息が漏れる。
我愛羅は、1つ1つ確認しながら私の全身に触れていく。
「…あっ、…ハァ…」
私の体、余すことなく触れようとしてくれる。
その行為に、視界が徐々に滲んでいった。
「…っ、…んぁっ!」
「うっ……ハァ…ハァ…」
律動が激しくなり、一瞬大きく体を痙攣させた後、私に向かって倒れこんできた我愛羅は、私の上で荒れた呼吸を整えようとしていた。
「ユナ、すまない」
「ぇ?」
「…泣いてる」
我愛羅はまだ肩で息をしながらも、少しだけ体を起こし私の頬に触れながらそう言ってきた。
「…大丈夫」
「うん?」
そしてそれと同じように、私も我愛羅の頬に触れながら答えた。
「人は、嬉しくても涙が出るの。我愛羅に触れられて、嬉しいんだよ」
「…」
そう言って、我愛羅の頬に、自分の額をくっつけた。
「…やはり謝らなくてはいけない」
「うん?」
「1度だけで止めるつもりだったが、無理そうだ。すまない」
我愛羅は本当に申し訳なさそうにそう言ってきた。
「…さっきも言ったでしょ?我愛羅に触れられることを、嫌だって思うわけないじゃない」
そう言った私にどこか…困ったように笑いながら、我愛羅はもう何度目かのキスをしてくれた。
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bkm