■ 22
「コイツはなぁ、うちの里じゃヒナタと並んで穏やか癒し系くノ一なんだよ。いのやサクラみてぇに直情型じゃねーの。俺にとってはチョウジの次に長ぇつきあいしてる奴なんだよ。その長いつきあいの中でもあんっな感情的になって泣いてるコイツ初めて見たんだぞ?」
「…泣いてた?」
「なんでそこに驚いてんだよ?この3ヶ月を振り返って泣かせるようなことしてないとでも言うのかお前?」
「…」
「お前なぁ…」
大きな溜め息をついたシカマルは、我愛羅に対して言葉を続けた。
「風影として忙しいんだろうが、お前らは圧倒的に会話が足りてねぇんだよ。無理してでも時間作れ。もっと腹割って本音で話し合え。それが出来ねぇなら、コイツは俺が木の葉に連れて帰る」
私はそれを俯いて聞いていた。
「奈良シカマル。お前の言い分はわかった」
俯いている私の耳に我愛羅の声が響いた。
「そのように善処したいところだが、今は時期が悪い。すぐには無理だ」
…あぁ、やっぱり。
この人はやっぱり…。
「だからなぁ、それを」
「もういい!…もういいよ、シカマル。もう、十分わかった」
私の声を聞いたシカマルが少し横にズレたことで、
「…何が『わかった』?」
こちらを見ている我愛羅と目が合った。
「あなたは、風影で、この里が大事」
一語一語、それは自分自身の中でわかっていたことを反復するように口にした。
「あなたにとって、砂隠れの里が1番大事。その次はこの里に住む人たち。他里から来た私は1番最後。それがよくわかった」
「…それは違う」
「違わない。あなたの中の優先順位で私は砂隠れの里にいる人間の中で1番下」
「違う!」
私の言葉に、…少なくとも私が今まで見てきた彼の姿の中で初めて声を荒げた。
「オレはお前を大切に思っている」
「…嘘ばっかり」
「嘘じゃない。お前の言う順位では計れないが大切に思っている」
でもそれも一瞬のことで、すぐにいつも通りの彼に戻っていた。
「そんなこと言われても、信じられるわけないじゃない。私たちは所詮、朝のほんの少しの時間を共有するだけのただの同居人でしかないんだから」
私の言葉に我愛羅は目を見開いた。
「それを基準に夫婦だと思ってるわけでもないけど、それでも一緒に生活するようになってもう3ヶ月でしょう?私たちの関係は…夫婦じゃなくてただの同居人だよ…」
…だけど、夫婦じゃなくて、初めから同居人であったのならまた違っていたのだろうに。
「………オレが何もしなかったのは、」
私がそんなこと考えていたら、少しの沈黙の後我愛羅が口を開いた。
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bkm