■ 20
「ユナ…」
「っ、」
「待て!ユナ!」
我愛羅だと認識した直後、踵を返して逃げ出そうとした。
のに、何故か足が動かなくて、あっさり捕獲された。
…この人私の足を砂で動けなくしてる…!
「少し話がしたい」
その上で腕を掴まれ本当に身動きが取れなくなった。
「お前が何に対して怒っているのかわからなかった」
逃げたい逃げたい、とにかく逃げたい。
「だが今そこで話を聞いた」
そう思っていた時に我愛羅から聞こえてきた言葉に、ドキッとしてそれまで見ないようにしていた我愛羅の顔を見た。
…さっきのお店の中での会話聞かれてた!?
「誕生日だったんだろう?悪かった、本当に知らなかったんだ」
そんな焦りをスルッとすり抜けるような言葉を我愛羅が口にした。
「(そっち行ったかぁ…)」
「(我愛羅、違う。そこじゃない。そこじゃないんだ)」
「(さっきそこの店でユナが大量に買ってった食材食わなかったのかって怒られたじゃん。しかもおばちゃん、面と向かって我愛羅に怒れないからって何故か俺の方向きながら…)」
「ぜ、」
「うん?」
「全然わかってないじゃないっ!!」
我愛羅の言葉を理解したと同時に叫んでいた。
「何よそれ!人を誕生日祝って貰えなかったから拗ねてる心狭い人間みたいに言わないでよっ!!」
「…いや、オレは一言も、」
「今言われるまで忘れてたっていうのに!そんなことで怒ってるんじゃないわよっ!!」
「じゃあ何を、」
「そんなの自分で考えればいいでしょっ!?私はもう木の葉に帰るんだから手を離して!!」
「何?」
「早く手を離してっ!!」
「あ、あぁ…」
「足もよっ!!」
「あぁ、」
拘束されていた手足の自由を確認出来た瞬間、
「うぉい!?引っ張るなっ!!」
「はっ!?おい、手を離せ!」
シカマルの腕を掴んで走り出した。
「…………」
「(誕生日のことじゃないとすると、砂の目で覗いてたのバレたんじゃ…)な、なぁ、我愛羅、」
「オレは、」
「う、うん?」
「…何を間違えた?」
「え!?い、いやぁ、そこは俺に聞いても…(こんな公衆の面前で覗きのことじゃねぇかなんて言えるわけねぇじゃん…)」
「木の葉に帰ると言ったあの言い方、もう戻らないつもりか?」
「そこもほら、俺にはわかんねぇけど、テマリが着いて行ったから(と言うか着いて行かされたっぽいけど)」
「風影様が夫婦喧嘩を、」
「ユナ様が出て行くようよ…」
「と、とにかく!今は視察中じゃん!?風影室に早く戻ろうぜ?な?(じゃないと民衆の目が痛い)」
「……………」
「ほら!行くぞ、我愛羅!!」
「ユナ!待て!服が破れる!」
シカマルのその言葉で、我愛羅の前から走って逃げいた足を止めた。
「お前なんだって俺を引っ張って来たんだよ?」
「その台詞そのまま返そう。なんでお前は私を引っ張ってきた?」
「え!?だ、だって俺1人ユナと走り去って、後あといろいろ言われたらめんどくせぇだろ?」
シカマルの腕を掴んだ私と、テマリ義姉さんの腕を掴んだシカマルの3人で、通りに立ち尽くしていた。
「ユナ、ここからうちが近い。1度うちに来ないか?」
「あぁ、そうだな。そうしようぜ?」
「…お前も来るのか?」
「あんた、そりゃねぇだろ…」
テマリ義姉さんの言葉で、旧風影邸…我愛羅が生まれ育った家に行くことになった。
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bkm