■ 19
「…朝食しか一緒に過ごす時間がなく、」
「3ヶ月間1度も休みがなかっただと…!?」
ポツリ、ポツリと話終えた私の言葉を、シカマルとテマリ義姉さんがそれぞれ反復するように口にした。
「…仕方ないことなんだろう、って思ってたけど、」
先日のあの出来事は、…それは彼の中の優先順位とでも言うのか…、そう言うのを垣間見た気がした。
「…俺は『影』になったことも、その側近になったこともねぇからわかんねぇが、確かに大戦終結後各里体制立て直してる今の時期、くっそ忙しいんだろうってことはわかるし、ある程度は仕方ねぇとは思うが、」
「仕方がないことはないだろう!」
シカマルの言葉にテマリ義姉さんが声を荒げた。
「この3ヶ月、私を始め部下たちには均等に休みを与えてたんだ。それも人によっては連休を取ってた奴もいる。その穴を全て1人で埋めていたってことだろう!?アイツは何を考えてるんだ!?」
「…いっや、それ俺に言われても、」
「カンクロウに至っては嫁どころか恋人だっている気配すらないのにこの間3日も休みがあったんだぞ!?いらないだろう3日も!家でゴロゴロされても邪魔なだけだ!馬鹿じゃないのか!?」
「そこはなんとも…」
「ユナ、お前は悪くない。我愛羅には私から言ってやる。安心しろ」
フン、と鼻息を荒げテマリ義姉さんは言った。
「もう、」
「うん?」
「…何もしなくていいです。木の葉に帰りたい…」
「「…」」
木の葉に戻ったところで、おばあちゃんもいない今、私が帰る家なんてないんだけど…。
それでもこの土地にいるよりは…、そんなことを思った。
「…1つ提案なんすけど、」
コホン、とシカマルが咳払いをした。
「2人がどうなるにせよ、一旦俺がユナを木の葉に連れて帰るってのはどーっすか?あっちにはヒナタもいるし、今のユナにはここにいるよりは良いだろうし、とりあえず落ち着くまでは。そこから先は2人の判断に任せるってことで」
「…そんなことは、」
「あんただけじゃ判断出来ねぇとか言うなら承諾がなくともこのまま首に縄つけてでも連れて帰るからな?こんな状態のコイツ置いて帰ったら、それこそヒナタはじめ同期に合わす顔がないんでね」
「…」
シカマルの言葉にテマリ義姉さんは押し黙ったけど、
「…はぁ…、わかった、こっちは私がどうにかする」
1つ溜め息を吐いた後、了承した。
「…ごめんね、シカマル…」
「あ?…バーカ、いつも言ってただろ?問題が起きる前に言え、って。今回はちょーっと遅ぇ気もするが、まぁ許容範囲ってことにしてやるよ」
シカマルはぐしゃぐしゃ、と乱暴に私の頭を撫でた。
「テマリ義姉さんも…、すみません…」
私の言葉に、テマリ義姉さんは少し困ったように笑った後で、
「いいや、お前が謝ることはないよ。…それに正直なところ、仲間のためにここまで言ってくれる友人がいるお前が羨ましい」
うちではなかなかないと思うから、とどこかさみし気な顔をした。
「ま、そうと決まればここは甘味処だし?好きなの頼めよ。請求は我愛羅ってことにしてやるから」
「いやどうせならカンクロウにしないか?アイツなら金の使い道がない」
「そこはお好きにどーぞ。…ほら、ユナ何食うんだ?あんたも食うだろ?」
「あぁ、もちろん。ユナ、ここのお薦めは、」
メニュー表を差し出しながら言うテマリ義姉さんとシカマルに、
「ありがとう、2人とも」
「…さっさと決めてくれー」
「シカマル、お前は食べないのか?」
「俺は甘味には興味ねぇっすから」
「いやこれがなかなか甘くなく、渋目の濃い茶とすごくあって、」
「マジで?」
それだけ伝えた。
「どっちにしろ、1度荷物取りに帰らねぇとだよな?」
3人で食べるだけ食べ甘味処を出た時、シカマルが私に言ってきた。
それに1つ頷くと、
「だよな?んー…じゃあどうすっか、あ、」
呟くように言ったシカマルが、私の後方に目を向け驚いたような声をあげた。
それに釣られて後ろを振り返ると、
「ユナ…」
「!?」
里内を視察していたのか、風影服を着ている我愛羅が立っていた。
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bkm