NARUTO


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ゆびきり


14


「ユナ、火影殿からお前宛だ」


我愛羅が仕事に向かう前、私に6代目火影カカシさんからの手紙を手渡してきた。
なんだろう、と受け取った手紙の封を開けると、


「ユナへ
元気にしてるかーい?
俺があげた本、役に立ったでしょー?
はたけカカシ」


実に砕けた内容の短文な手紙が送られてきた。
…あれは結婚が決まって少し経ったくらいのこと。
その日の任務を終え、家路に着こうとしていた私はカカシさんに遭遇した。


「降って湧いた誰かさんの結婚で大忙しな綱手様と違って、当事者はまた随分暇そうだね」


カカシさんとは任務で一緒になったことはない。
ただナルトやサクラと一緒に里を歩いてる時にたまたま遭遇したカカシさんによくご飯をご馳走になっていた。
その時に私が得意とする水遁の術も、コピー忍者と呼ばれるほどの腕前を持つカカシさんはお手の物で、いろいろヒントを教えてもらったりしていたから直接的指導と言う関わりはなかったものの、すっかり話し込む間柄になっていた。


「…嫁ぐ前に万が一があっては困るって、火影様に簡単な任務しか任されないのでほんと暇です」
「ははっ、気分は花嫁の父?いや、綱手様なら花嫁の母か」


だからこの日も、いつもと変わらない会話をしていた。


「カカシさんこそどうしたんですか?こんな時間にこんなところで」
「んー?噂の風影様のお嫁さんに、俺もお祝いの品を贈っておこうと思って」
「え!?い、いいですよ!カカシさんまで何言ってるんですか!」


他里ではどうかはわからないけど、火の国、少なくとも木の葉隠れの里では花嫁にお祝いの品を贈る風習がある。
お祝いの数だけ幸せになれる、と言う言い伝えからだ。
アカデミー同期のみんなは、個々に小物などをくれた他に、本来私の家が用意しなければならない花嫁衣装を、両親と、そして養育してくれていた祖母も亡くした私のためにみんなで出し合って用意してくれた。
後日、砂隠れの使者から所謂結納金が届いたのでそのお金で返すと言ったところ、仲間の結婚これくらいして当たり前だと誰1人受け取ってはくれなかった。
私は家族にはあまり恵まれた方ではなかったけど、仲間にはとても恵まれている。
そう思った矢先の出来事だったから余計にカカシさんのこの言動に、これ以上誰かから何かされたら申し訳なさしかない、くらいな気持ちだったと思う。


「えー?だってユナには幸せになってもらいたいでしょ?」


ユナにはってよりみんなにだけどね、とカカシさんは笑ながら言った。
その言葉に、ほんの少し前まで大きな戦争があって、命懸けで戦った日々が脳裏を過った。


「と言うわけで、俺からはこれね。結婚おめでとう、ユナ」


そう言いながら包装された袋を渡された。


「…ありがとうございます!開けていいですか?」


チラッとカカシさんの顔を見ると、どうぞ、とジェスチャーされたので、遠慮なくその場で開封した。
袋から出てきたものは、


イチャイチャ アクティビティ〜初夜の所作〜


1冊の本だった…。


「それ絶対役に立つよ?砂隠れに行く前に読んでちょうだい」


カカシさんとは直接的指導を受けたと言うような関わりはない。
サクラやナルトの師であって私にとっては単なる木の葉の忍びの先輩の1人にしかすぎない人だ。
…だけどこの時初めて、人を、それも仲間の師を本の角で殴りたいと思ったのは生涯忘れないだろう…。


「役に立ったも何も…」


結婚して早2ヶ月。
…未だ夫婦としての「初夜」を迎えていないなどと、本当に誰にも言うことが出来ずにいた…。
うっかり居間で寝てしまった夜を境に、ほんの少しだけ我愛羅との仲は縮まった気がしたしなくもない。
そしてあの日を境にたまにではあるけど、いの風に言うならデコちゅうと言うものをしているわけだけど、何せ相手は多忙な風影。
この2ヶ月、休みなしで働いていて、朝食の時しか時間を共にすることがなかった。
最も私が我愛羅の帰宅を起きて待っていればいいのかもしれないけど、待っていると明らかになんで待ってたんだと言う態度を取られ、それはそれで傷つくので待たずにいるというせいもある(そのためだけに起きているわけじゃなく、結果的に起きていた、と言うのは我愛羅の中ではいいらしいので、毎日寝ているわけでもないのだけど)


「…はぁ…」


ここに住むようになってから出た私の溜め息を集めたら、この家は埋まってしまうんじゃないか、と言うくらい数え切れないほど零した溜め息を、また1つ吐き出していた。
そしてあの盛大な結婚式から3ヶ月が経とうとしている日の朝、


「あぁ、そうだ。今日は早く帰れそうだ」


いつものように出て行こうとする我愛羅が、いつもとは違う言葉を口にした。

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bkm

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