■ 13
翌朝、いつもの時間に目が覚めると、
「…スー…」
私の腕の中で実に気持ち良さそうな寝息を立てている風影様がいた。
あのまま熟睡出来たんだと安堵したのと同時に、畳の上で何も掛けずに寝て、風邪でも引かせてしまったらと不安にかられた。
「…」
とても今更な気もするけど、風影様を起こさないようにそっと起き上がり、一旦部屋に布団を取りに戻った。
「…」
そして未だ寝息を立てている風影様にそっと布団を掛けた。
「おはようございます」
「…おはよう」
それからしばらくしてから、少しの寝癖をつけた風影様が起きて来た。
「よく眠れました?」
「…あぁ」
「なら良かったです。もうすぐ準備が終わるので先に顔を洗って来てください」
いつもより遅かったわけではないけど、いつもは風影様が起きてくる前に済ませている朝食の準備が今日は少し遅れていた。
その旨伝えて、残りの準備に取り掛かったのだけど…。
「…どうかされました?」
「…」
「風影様?」
一行に動き出そうとしない風影様に、1度手を止め声をかけた。
「あの…?」
「…ユナ、」
「はい?」
「お前はいつになったらそれを止める?」
「え?」
「オレの名前は『風影』じゃない」
少しの寝癖をつけながらも腕を組み、私を見ることなく呟くようにそう言った。
「それとオレに対しても、ナルト同様に砕けた話し方でいい」
あの日、私にまじないが効いたと言ってきた時のように、軽く目を伏せそう言った風影様。
…私は「妻」と言う身でありながら、この人のことをあまり知らない。
「うん、我愛羅。わかった」
「…顔を洗ってくる」
でも少し、ほんの少しだけ、この人のことがわかったような気がした出来事だった。
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bkm