ラブソングをキミに


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3つのうちの1つ


2


「…んっ…」
「あ!気がついた?」


頭に鈍い痛みを感じながらゆっくり目を開けると、


「びっくりしたよね?まだ痛むかい?」


気を失う前に見た、調査兵団のメガネの女の人がいた。


「おい。」


その女の人とは違う場所から声が聞こえた。
目をやると、壁に寄りかかりこちらを、…明らかに睨んでる、男の人が立っていた。


「なんで飛び出した?」


その人は私を睨みつけながら聞いてきた。
…コニーと話すようになって、(コニー限定で)だいぶ話が出来るようになったとは言え、なんと言うか、


「さっさと答えろ。なんで飛び出した?」


こういう人を前にすると、「言うべき言葉」「伝えるべきこと」がわからなくなって、う、とか、あ、とか、しか、声が出なくなっていた。


「リヴァーイ、恩人にその態度はないだろう?」
「はぁ?恩人だと?」
「彼女が飛び出さなきゃ、キミの頭に直撃だったかもしれないだろ?」
「コイツが飛び出さなきゃ、誰も怪我することなく、今頃俺もお前も休めてただろうが。」
「そりゃあまぁ、そうかもしれないけどさ…。」


明らかに。
明らかに、このリヴァイと呼ばれた人は、さっきの私の行動に対して怒っていた。
…私、余計なことした?
だってあんないきなり石を投げつけられたら、だって…。
私あの時、コニーが来てくれて嬉しかったのに…あっ!


「あ、あの!」
「なんだ?」


メガネの女の人に声をかけたつもりが、返事をしたのはリヴァイと呼ばれた男の人で。
低く、明らかに怒気を孕んでいるその声に、びくっと体が怯んだのは確かだった。


「一般人を怖がらせるなって!…それで?なんだい?」
「…チッ!」


メガネの女の人の言葉に、リヴァイさんの舌打ちが聞こえた。


「お、弟、」
「うん?」
「弟と、一緒だったんです、けど、」
「あぁ!あのコニーって子だろ!」
「そうです!どこですか!?」
「あのガキなら煩ぇから黙らせた。」
「…え!?」
「だからそうやって怖がらせるようなこと言わない!…コニーなら隣の部屋で寝ているよ。」


にこっ、と笑う女の人。
…良かった、コニーも無事(か、どうかは不安なところだけど)らしい。


「あ、コニーだ。」
「え?」
「あ?」
「姉ちゃんっ!!」


私の声の一拍後、バターンとコニーが扉を開けて入ってきた。


「姉ちゃん!!大丈夫かっ!?この人たちに変なことされなかったかっ!!?」


そう言ってベッドサイドに駆け寄ってきたコニー。


「うん、大丈夫。コニーは?」
「俺は大丈夫だけど…。」
「おい。」


コニーと話しているとき、再びリヴァイさんが口を開いた。


「お前、なんで今コイツが部屋に来る前にわかった?」


今度は別に怒気を孕んでいるわけじゃなかったけど…。
この人の迫力に、また口が思うように動かなくなっていく。


「おい、答えろ。」
「姉ちゃんをいじめるなっ!!」
「あ?」
「お前、なんかエラソーだぞ!姉ちゃんをいじ」
「黙れクソガキ。また黙らせるぞ。」
「コ、コニー!大丈夫だから…!」


リヴァイさんは本当にコニーを(暴力的な意味で)黙らせようとしている気がして、慌てて止めに入った。


「…それで?なんでコイツが部屋に入ってくる前にコイツだとわかった?」
「え、えぇー、っと、」


今にも暴れだしそうなコニーの腕を掴みながら、何とか言葉を絞りだした。


「足音、が、聞こえた、から…?」


なんとか言った言葉に、


「聞こえたか?」


リヴァイさんは、メガネの女の人に確認したけど、女の人は首を横に振った。


「俺も聞こえなかった。第一足音が聞こえたとして、なんでコイツだとわかる?」


なんだろう。
私ただ、石をぶつけられそうになっていた人を助けただけなのに…。
これじゃまるで尋問だ。
やっぱり「誰か」とコミュニケーションをとるのは、苦手…。


「だ、って、」
「だってなんだ?」
「…コニーの足音は、ラ♭だから…。ここの床、音が響いて、よく、聞こえるし…。」


なんとか答えたその言葉が、波紋を呼ぶなんて、思いもしなかった。

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bkm

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