ラブソングをキミに


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3つのうちの1つ


1


「今日行くお祭りはさ、」


コニーが「俺がいるから大丈夫!」と譲らなかったので、ママたちは渋い顔をしたまま、私たち2人を街へと送り出してくれた。


「1つ、聞きたいことがあったんだけど、」
「なになに?」
「コニーは、いくつ?」
「え?」


私のその質問に、コニーは驚いた顔をした後、一瞬悲しそうに顔を歪めた気がした。


「俺は今年で8歳!」


でもそれは本当にほんの一瞬で、すぐにいつものコニーになった。


「ちなみに姉ちゃんは15歳ね!」
「15…。」


15歳と言うわりに、見た目が幼い(ここが日本ではない外国なら特に)気がするけど…。
…この世界は学校とか、ない、のか、な…?
そう思っていても、「学校」と言うものにそこまで思い入れがあるわけでもない私は、特にそのことについて問い詰めることはしなかった。


「ほら!見えてきた!!」


この世界は、私の記憶にある世界と比べて、ずっと昔を生きているように思えた。
すごく遠くに聳え立つ、どこまでも続く壁を除けばそこは、中世のヨーロッパとか。
そういう世界に来ているような気がした。
村から街への移動手段も車やバスじゃなくて、馬車と言う、すごくレトロなものだった。


「…街だね。」
「でっけーだろ!」


姉ちゃん、迷子になるなよなんて言いながら手を引いてくれるコニー。
人、人、人。
…こういう喧騒は、苦手だ。
だんだんと、頭がくらくらして…、


「調査兵団が帰還したぞーーーっ!!!」


一際大きい男の人の声が響いたと思ったら、お祭り騒ぎで賑わっていた通りの中央がサーッと開き、その間を馬に乗った人、荷馬車に引かれている人、様々だったけど、同じ服を着ている人たちが歩いていった。


「税金の穀潰しどもがノコノコ帰ってきたぞ。」


そんな陰口が、耳に入ってきた。


「ちょうさへいだん、て?」
「ほら!この前言っただろ?3つの兵団があって、そのうちの1つで、」


コニーの話によると調査兵団とは、壁の中に押し込まれた人類が、再び壁の外に出るために壁の外を調査する兵士たち、らしかった。
それならこの人たちは、みんなのために頑張ってる人たちですごい人たちだ、って思ったけど、


「今回も収穫ナシだと!」
「一体何人無駄死にさせりゃ気が済むんだ!」


壁の中の人たちは、彼らのことをあまりよく思っていないようだった…。


「じ、じゃあ、さ!」


調査兵団の一団が去ると、再び街に喧騒が戻り、お祭り特有の熱気が戻ってきた。
コニーは記憶を失くした(と、コニーたちが思っている)私にいろいろなものを見せようと、連れましてくれたけど…。


「コ、コニー、」
「ん?」
「ち、ちょっと、休憩、しよ?」


人込みが苦手な私は、くらくらと、立ちくらみがしてきた。


「姉ちゃん病み上がりだもんな!えーっと、あ!あっちに飲み物売ってる店あるから、俺買ってくる!」


ここで待ってて、と、コニーはそう言って私を通りから少し外れたところにあるベンチに座らせてくれた。
ふぅ、と息を1つ吐くと、


「うちの、うちの子はっ!?」


縋るような、女の人の声が耳に入ってきた。
その方向を見ると、さっきの…調査兵団の服を着ている人たちに、1人の女の人が詰め寄っていた。


「息子さんは、」
「っ!!?」


調査兵団の服を着たメガネをかけた女の人が、そう口を開いた直後、女の人はその場に泣き崩れた。
それがどういう意味なのかはわからなかったけど、


「あ、危ないっ!!」
「え?」


私と同じように、その風景を見ていたらしい人影の中から、私が村で投げつけられた石よりもずっと大きい物が飛んでくるのがわかった。


「この人殺し集団っ!!!なんで彼だけが死ななければならなかったのっ!!?」


咄嗟に体が前に出た私は、飛んできた何かが頭を強く打ったのを感じた。


「ち、ちょっとっ!ねぇ、大丈夫っ!!?」


さっき聞いた、調査兵団の服を着たメガネの女の人の声が、どこか遠くで響いたのを感じた。

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bkm

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