ラブソングをキミに


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ラブソングをキミに


3


「ついて来い」そう言ってテントから出て歩き出すリヴァイさん。
…夜とは言え、ここは壁外。
出歩くのは危険なはずだ。
それに対して口を開きかけたら、リヴァイさんの足がピタリと止まった。
そこはなんてことはない、「壁外拠点の1つ」として今いる場所の裏手に当たる、…表側の光が一切当たらない場所。


「どうせお前のことだ。見上げてる余裕すら、なかったんじゃねぇか?」


そう言いながらリヴァイさんは夜空を見上げた。
つられるように上を見ると、


「…きれい…」


壁に遮られることのない広い広い世界でもなお、所狭しと瞬く星たちがその姿を表していた。


「だから言ったじゃねぇか。『籠の中の空じゃ、狭すぎる』ってな。」


ここには本当に、街灯がない。
「記憶の中の世界」であれほど瞬いていたネオンがない。
本当にただただ、新月の夜が見せる星の光だけ。
「この世界」は、「記憶の中の世界」よりずっと、残酷だ。
死はずっと身近なもので、それは誰しもに起こり得ること。
その死は、最もあってはならない、「人の形をした何か」に捕食されることで訪れる。
ずっと、残酷な世界。
それでも、ずっとずっと…。


「When you're weary, feeling small When tears are in your eyes,I will dry them all」
『キミが疲れ果て途方にくれながら涙を浮かべていたら、僕がその涙を拭いてあげる』



世界の美しさに、一瞬視界が滲んだ気がした時、微かに、でも確かに、歌が聞こえた。
驚いて振り返ると、星を見上げたままリヴァイさんが小さく口ずさんでいた。


−あの歌の意味は知らねぇが、ここよりも『外の世界』の方が合ってんじゃねぇか?−


リヴァイさんがそう言ったのは確か、入団式前日の、やっぱりこんな風に星の綺麗な夜だった。


「I'm on your side. When times get rough And friends just can't be found Like a bridge over troubled water I will lay me down」
『ボクはいつも、キミの傍にいる。辛い時も独りぼっちの時も、僕が橋となって激流の中に立ち尽くすキミを救い出してあげるよ』


私はこの歌が、好きで、嫌いだった。
この歌のメロディはすごく好き。
心に響く綺麗なメロディ。
でもこの歌の歌詞は、嫌いだった。
何故なら、


「When you're down and out When you're on the street When evening falls so hard I will comfort you」
『キミが挫折し希望を失って、1人彷徨い辛く寂しい夕暮れを迎えた時は、僕がキミを慰めてあげる』


人と関わることの苦手な私に、この歌の歌詞のように私を思ってくれる人に会えるわけないって、思っていたから…。


「I'll take your part When darkness comes And pain is all around」
『暗闇が訪れ苦しみに包まれた時も、僕だけは必ず、キミの味方だ』


「この世界」に来て、リコちゃんと本当に仲良くなれて。
「誰か」と打ち解けるってことが、どんなに素敵で、どんなに必要なことだったのか、初めて理解できた。
だけど…。


「Sail on silver girl Sail on by」
『さぁ立ち上がって!前に向かって歩き出すんだ!』


もし、この歌を「壁内しか知らない」リコちゃんが歌ったとしても、あまり心には、響かなかったんじゃないか、って、思う。
それはきっと、リヴァイさんだから…。


「Like a bridge over troubled water I will ease your mind」
『僕が必ず、キミを救い出してあげるから』


常に「死」を身近に感じてきた、リヴァイさんが歌ってくれたからこそ、こんなにも…、涙が出てくるんだと思う。
「あの時」以降初めて、両の目から溢れ出る涙を流す私に、リヴァイさんは星空を見上げながら、まるで子守唄か何かを聴かせるかのように、ずっと、歌ってくれた。

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