ラブソングをキミに


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卒業、そして


5


「おい、」
「えっ!?」
「…なんなんだ、昨日から。」


ラガコ村での休息も終わり、入団式の2日前に調査兵団宿舎に戻った私。
そこで出迎え、て、くれた、わけじゃないけど、たまたま廊下でばったり会ったリヴァイさんを「人類最強の兵士」なんだ、とまじまじ見ていた昨日。
入団式を明日に控え、窓の外では先輩兵士たちが新兵を迎え入れる準備に少しだけ慌しそうにしていた。
その中に、リヴァイさんを見つけた。
「一個旅団相当の戦闘力」なんだ、と再びまじまじ見ていた今。
気づかれていないと思っていたら、いきなりグルッとこっちを振り返ったリヴァイさんに言われた台詞。


「な、なんなんだ、って…?」
「昨日からジロジロと人のこと見やがってテメェ喧嘩売ってんのか?」


何かの準備、と言うか掃除…?を、していた手を休め、リヴァイさんがツカツカとこちらに近寄りながら言ってきた。
………や、あなたに喧嘩なんて売ってしまったら私程度の兵士、即死じゃないですか?
だってあなた自分がなんて呼ばれてるか知ってるんですか?
兵士4000人分の働きをする男ですよ?(厳密には違うけど)
4000人の兵士対私なんて火の目を見るより明らかな喧嘩を率先して売るわけがないじゃないですか…。


「…………………」


そう思いながらチラッと盗み見るリヴァイさんは明らかに血管を浮かび上がらせお怒りなようで…。
あぁ、何か言わなきゃ何か言わなきゃ…。
その時フッと、


−まぁさぁ、女が「可愛い」「綺麗」って言われて喜ぶのと一緒で、男なんてテキトーに「カッコいい」って言っとけばいいんだって!−


訓練兵時代にリコちゃんが話していた言葉を思い出した。
…のが、いけなかったんじゃないかと、後にして思う。


「リ、リヴァイさんは何しててもカッコいいなぁ、って、」
「…………………」


私の部屋は1階東側で。
リヴァイさんは今、私の部屋から見える場所の掃除をしているようで。
私の部屋の窓の近くまで来ていたリヴァイさんが私の言葉に、ピクッと眉間のシワを深くしたのが見えた。
……………リコちゃん、私「カッコいい」を使う場所間違えたかもしれない…。
リコちゃんはテキトーに言っておけ、って言ったけど、今明らかに眉間のシワ増えたよ…?
私やっぱりこの3年間、兵士としての訓練もさることながら、人とのコミュニケーション訓練ももっと積極的にしておけば良かった!
休暇の鬼特訓の相手がリヴァイさんだとコミュニケーションなんてそんなのないに等しいからこんな時どう言って回避すればいいかなんてわからないよ…!
あぁ、どうしようどうしようどうしよう。


「フィーナ。」
「は、はい!」
「暇ならお前も手伝え。」


そう言ってリヴァイさんは私の部屋の窓から離れていった…。
…よくわからないけど、説教されずに済んだ…!!
「人類最強の兵士」に怯えながら説教されるくらいなら、掃除手伝いくらい…!




「あれ?」
「なんだ?」
「…リヴァイ、そこさっきも掃いてなかったかい?」
「…気のせいだろ。」
「そうだったかなぁ…?まぁなんでも良いけど、掃除するって言い出したのリヴァイなんだから気が済むまでやったらいいけど、ちゃんと終わらせるんだよ?」
「わかってるからお前も手動かせ。」
「(機嫌が良いのか悪いのか微妙な反応だ…)」




リヴァイさんとハンジさんのやり取りを割って入るかのように、


「あ、あのっ!私はどこを掃除すれば…?」


部屋から2人のいる場所まで行き、声をかけた。


「あれ?フィーナはいいよ。だってこれは新兵歓迎のための掃除だし、」
「で、でも…、」
「暇だから手伝いたいそうだ。手伝わせてやれ。」


使え、と言わんばかりにリヴァイさんから箒を渡された。
それを受け取ると、リヴァイさんはどこかに行ってしまった。


「フィーナ?」
「なんですか?ハンジさん。」
「…本当にやらなくていいんだよ?キミも新兵なんだから…。」


覗き込むように私を見てきたハンジさん。


「だ、大丈夫です。ほんとに暇なんで…。」


そう言って箒を動かし始めた。


「フィーナは良い子だねぇ…。私だったら絶対逃げてるよ!」


ぶつぶつと言うハンジさんと共に、翌日に控えた新兵歓迎のための掃除を進めていった。

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bkm

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