ラブソングをキミに


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卒業、そして


4


「コニー!」
「姉ちゃん!!」


調査兵団への入団手続きを済ませ、その足でラガコ村へ向かった。
訓練兵だった3年間、帰ってこなかったわけじゃないけど、


「コニー、また背が高くなった?」


だんだん男の子男の子していくコニーに驚かされる。


「姉ちゃんは相変わらずチビのままだな!」
「…アンタも対してデカくないだろうが!」
「ママ!」


コニーの後ろからママの姿が見えた。
ママはこの3年間、私が手紙を送るたびに返信と言って友達と食べなさい、と、お菓子とか野菜とか…、いろいろ送ってくれていた。


「訓練兵、卒業おめでとうフィーナ。」
「ありがとう!」
「…それが制服かい?」


調査兵団宿舎から直接ここに来た私。
昨日の段階ですでに私の制服は用意されていて。
ハンジさんが、兵士の制服姿を見せてやるのも親孝行の1つだ、なんて言うから、制服を着てラガコ村まで来た。


「うん、そうなの!」
「…姉ちゃんほんとに調査兵団に入んだな…。」


コニーは私の背中の自由の翼を見ながら言った。


「最初からそのつもりだったから。」


コニーはやっぱりどこか不服そうだった。


「ねぇフィーナ。」
「うん?」
「あれ!やってみてよ!」


あれ、と言いながらママが自分の胸をドンと叩いた。
それを真似て、


「はい!」
「おー!」
「姉ちゃんがなんかカッコいい…!」


トン!と右手で拳をつくり胸を叩きながら、敬礼をして見せた。


「…あぁ!これが憲兵団だったらなぁ…!」
「私なんかじゃ、憲兵団は無理だよ。」
「そんなことねーって!姉ちゃん、立体機動でトップって言ってたじゃん!」
「まぁ…、それはそう、だけど…。」


3年間、成長したとは言え、コニーはコニーで。
相変わらず姉ちゃん姉ちゃん言ってくれる、可愛い弟だった。


「あれ?コニーは?」
「もう寝たよ。」


夕飯時には帰ってきたパパと、久しぶりに一家団欒の時を過ごした。


「フィーナが兵士、か…。」


パパはなんだか感慨深そうに呟いた。


「…ウォール・マリアの向こうには、本当に巨人なんているのかね?」
「俺たちは見たことないからなぁ…。」


パパとママもやっぱり、「巨人討伐」と言う言葉にピンと来ないようだった。


「いいかい、フィーナ。危なかったらすぐに逃げるんだよ?」
「そうそう!いっくら兵士だからって、あんたまだ10代の娘なんだからそんなことに命賭けなくてもいいんだからね!」


わりと真剣な顔つきで、パパとママが言ってきた。
…危なくなったら逃げるとか、兵士としていけないことなんじゃ…。
なんて、少し苦笑いした。


「大丈夫だよ。リヴァイさんの話だと、兵団内で1番安全な班に配属される、って言われたし。」
「リヴァイ…、あぁ、以前お前を迎えに来た、」
「そうそう。こーんな目してる人で、」
「確か『人類最強の兵士』って呼ばれてる人だったかな?」
「…え?」


こーんな、と人差し指で目を吊り上げてリヴァイさんの真似をした私に、パパが予想外のことを言った。


「じ、人類最強…!?」
「なんだ、知らなかったのか?」


リヴァイさんは強い。
それも凄く。
以前リコちゃんは「兵士の中で最強」って言ってたけど…。


「なんでも1人で一個旅団相当の力の持ち主らしいじゃないか。」
「そっ、」


んなに強いの、リヴァイさん!!?
一個旅団相当って普通に考えて兵士4000人分てことでしょ!?
確かに私も現役兵士最強なら人類最強じゃないのかって思った時もあったけど、一個旅団相当!?


−お前程度の兵士が俺の班にいたら俺が仕事出来ねぇだろうが−


…あれは、こういうことだったんだ…。
単に私がお荷物扱いされたと思っていたけど、いやそれも否めないけど、リヴァイさんの班に入る、ってことはつまり、1人で4000人分の働きをするリヴァイさんをサポート出来るだけの戦闘能力がないとダメってことなんだ…。


「まぁ、そんな人がフィーナのことを気にかけてくれてるなら安心だね。」


いや、リヴァイさんはきっと壁外じゃ私どころじゃない働きをしてるんじゃないのかな…?
っていうか、きっとそう。
じゃなきゃ、こんな山奥の一般人にまで「人類最強」なんて名声が轟くわけないし…。


「フィーナ。」


私がリヴァイさんの強さに思いを馳せていた時、不意にママが私の名前を呼んだ。


「私たちには巨人なんて信じられないけど、あんたはあんたが好きな道を生きたらいい。」
「…ママ…。」
「ただね…。」
「うん?」
「…何度壁外へ行ったとしても、必ずちゃんと、帰ってくるんだよ?」
「…」
「そしたら毎回、『おかえり』って言ってあげるから。」
「…うん。」


そう言って笑うママ。
隣を見ると同じように笑うパパ。
「記憶の中」のパパとママがいる私には、この2人とは3年前からの親子と言う認識しかない。
でも笑う2人の顔を見ていたら、少しだけ、視界が滲んできた。

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bkm

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