ラブソングをキミに


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卒業、そして


3


「やぁ、フィーナ。久しぶりだね。」


翌朝、リヴァイさんが私の部屋の前まで来てそのまま2人でエルヴィンさんのところに行った。


「訓練兵団修了おめでとう。」
「あ、ありがとうございます。」


差し出された手に答えるように右手を差し出すと、大きな大きなエルヴィンさんの手が私の手を握り締めた。


「キミの入団を心より歓迎する。」
「…はいっ!」


エルヴィンさんの体格もだけど、落ち着いた雰囲気が「お兄さん」と言うより、どちらかと言うと「お父さん」な感じだ、なんて。
本人にバレたらもしかしたら失礼かもしれない、って言うようなことを思った。


「昨夜はよく眠れたかい?」
「はい。エルヴィンさんが1人部屋にしてくれたお陰で…。」
「え?」


私の言葉にエルヴィンさんが驚いたような顔をした。


「…なん、です、か…?」
「…いや。部屋を気に入ってもらえて良かった。」


エルヴィンさんは、にっこり、と、笑いながら言った。
その後少し談笑…していたのはエルヴィンさんだけで、エルヴィンさんの話題になんとか答えるのが精一杯な私と、全く会話に入ろうとしないリヴァイさんとの3人の空間が持たれた。


「それなら今日は、」
「手続きが終わり次第、村へ帰るそうだ。」


そこで初めて口を開いたリヴァイさん。
調査兵団に入団するための手続き、サインとかしなければいけない書類があるらしい。
それらを済ませたら村に帰っていい、とここに来る前にリヴァイさんに言われた。
…本当に「入団手続き」を早々に済ませたかったんだ…。
なんて思った。


「そうか。確かラガコ村だったかな?」
「は、はい。」
「念のため2日前にこちらに戻ってくるとして…、4日間は家で過ごせる、かな?」


ゆっくりしてくるんだよ、とエルヴィンさんは笑った。


「…そろそろお前の荷物が届く頃だな。」


リヴァイさんが不意に口を開いた。
昨日、ここに来る前に訓練兵団宿舎にある私の荷物をここに届けてもらうように手配してくれたようだった。


「俺は必要な書類を用意してから行く。先に部屋に戻ってろ。」
「はい。」


エルヴィンさん、リヴァイさんに頭を下げて部屋を出た。




「エルヴィン。入団に必要な書類は、」
「あぁ。確かここに…。…それより、リヴァイ。なんだ?さっきの話は。」
「…」
「フィーナを『1人部屋にするように』など、1度も言った覚えがないんだが?」
「…エルヴィンが決めたことにした方が自然だ。」
「お前も素直じゃないな。フィーナに自分が取り計らったと言えば感謝されるだろうに。」
「別に感謝される必要もねぇだろうが。それよりさっさと書類を出せ。」
「…ほら、これだ。計3枚、サインしてもらう箇所がある。」
「…サインさせて、後でまた来る。」
「わかった。(…しかし…。『あの』リヴァイがここまで面倒身が良い奴だったとは…。元来の性格か、それとも…)これはハンジが喜びそうだな。」
「何か言ったか?」
「いや。…フィーナにきちんと内容説明してやれよ?」
「あぁ…。」




私がなんとか1人で自室に戻ってからしばらくして、リヴァイさんがやってきた。


「これだ。読め。」


バサッ、と、テーブルに何枚か書類を置いたリヴァイさん。
その書類を1枚手に取る。
…え、えぇーっと、調査兵団への、入団にあたり、甲、が…。


「…あ、あの…。」
「なんだ?」
「い、意味が、」
「あん?」
「…ち、ちょっと言い回しが難しい、と、言う、か…。」
「貸せ。」


こちらの言語を覚えて3年の私に、こういう契約書的書類は難易度が高かった。
その私から書類を奪うように取ったリヴァイさんが、書類に目を落としながら言う。


「…つまり、だ。」
「はい。」
「早い話が『如何なる理由であろうとも、壁外での死亡もしくはそれに準ずる負傷、行方不明等において兵団は一切の責任を負わない』ってことだ。」


淡々と語るリヴァイさん。
…壁外での、死亡…。
巨人、を、見たことは、ある。
と、言ってもシガンシナ区の壁の上からなだけで、彼らが人を襲うところとかなんて…みたことがない。
だからイマイチ…、ピンと来ない。


「ほら、」
「はい?」
「わかったらさっさとサインしろ。」


………………サインていうものは、了承してからするものじゃ、ないんですか?
え、私今、内容は理解したけど、了承したか、と問われたらそこはちょっと微妙なところなんですが…。


「何してる?早く書かねぇか。」


書かねぇか、と言われても、そんな納得できていない死んだ時のことについてサインしろって…。
だって「この世界」では成人したとは言え、こういうのってやっぱり一応パパやママにも伝えた方がいいんじゃ…。


「安心しろ。」


私が悶々と考えていたら、リヴァイさんが口を開いた。


「お前はうちの兵団で最も安全なエルヴィンの班に配属される。死ぬことはまずない。」
「え…?」
「あ?」
「……リヴァイさんの班じゃ、ない、ん、です、か?」


驚いて聞き返した私に、リヴァイさんも一瞬、驚いた顔をした。


「…お前程度の兵士が俺の班にいたら俺が仕事出来ねぇだろうが。」


そう言い終わると、リヴァイさんはもう1度早く書け、とテーブルを叩いた。
慌ててペンを持ち、自分の名前を記入する。
さらさらと進むペンとは裏腹に、どこかチクッと棘が刺さったような感覚に陥った。

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bkm

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