ラブソングをキミに


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卒業、そして


2


「フィーナ!久しぶりだね!」
「ハンジさん!」


本当に、訓練兵修了とともにリヴァイさんに半ば拉致られ連れてこられた調査兵団宿舎。
そこには訓練兵時代にも数回、会うことのあったハンジさんと、


「えっ!?…な、なんです、か?」
「…フッ…」


初対面でいきなりクンクンと人の匂いを嗅いでくる背の高い男の人が立っていた。


「あぁ、気にしないで!彼はミケ・ザガリアス。初対面の人間の匂いを嗅いでは鼻で笑うって癖がある。でも意味はないから。」
「………個性的な人ですね…。」


初めてハンジさんたちと出逢った日に、コニーが言っていた。
「変人集団」て。
リヴァイさんは変人て言うかいっそ怪人…。
ハンジさんは変人て言うかむしろ奇人…。
私が知っている調査兵団の兵士の中で唯一まともなのはエルヴィンさんくらいだったわけだけど、ここにまた1人、ううん、むしろ正真正銘の変人に出逢ってしまったのかもしれない…。


「あははははは!!個性的だって!良かったねミケ!!」


なんて思った私を尻目に、ハンジさんが大爆笑した。
ミケさんも驚いた顔で私を見るし、リヴァイさん、は、無表情でこっちを見ていた。
…変なこと、言った?


「みんなミケを『変わってる』とは言っても『個性的』とは言わなかったからさ!」


笑いながらハンジさんが言う。


「俺も聞いてるぜ?」
「え?」
「ずいぶん『個性的』な耳をしてるらしいな?」


ミケさんがニヤッと笑いながら言う。


−みんなミケを『変わってる』とは言っても『個性的』とは言わなかったからさ!−


あぁ…。
ハンジさんの言わんとしたことが、なんとなく、わかる。


−なんかアイツ、うざくね?−
−てかキモい!何考えてんのかわっかんないからいきなり人刺しそう!−
−マジで!うちらじゃあ刺されんじゃん!−
−あははははははっ!!−


邪魔でしかなかった、この耳が…。
いっそ聞こえなくなればいいって思っていたこの耳が…。


「どうかしたか?」


『個性的』なんて言われる日が来るなんて、思いもしなかった。


「…いえ、なんでもありません。」


怪訝そうに見てくるリヴァイさんに答える。
そうか、とだけ言ってリヴァイさんは再び歩き出した。
ハンジさんとミケさんに軽く頭を下げて、リヴァイさんの後を追った。




「あれが噂の…。」
「どうだいどうだい!?何か嗅ぎ分けたかい!?」
「…そうだな。強いて言うなら、」
「うんうん。」
「ガキの匂いだった。」
「………………え?」
「つまり男を知らないガキと言うことだ。」
「…」
「最もリヴァイの話だと15ってことだからわからなくもない。」
「それほんとかいっ!!?」
「…なんだ俺の鼻を疑」
「そこじゃなくてリヴァイだよ!」
「え?」
「フィーナのこと15歳って思ってるんだねっ!!?」
「…そう言ってたが?違うのか?…と言うか楽しそうだなハンジ。」
「そう見えるかい!?だって『あの』リヴァイがこの手のことで葛藤する姿を見れる日が来るかもしれないと思うと楽しみでしかたないだろ!!この3年、地味にロリコンネタを振り続けた甲斐が出てくるかもしれないんだよっ!!」
「…よくわからんが、お前またリヴァイ怒らせてメガネ割られるなよ…。」




ハンジさん、ミケさんのそんな会話知るはずもない私は、リヴァイさんの後を追って宿舎内を歩いていた。
すると突然リヴァイさんが立ち止まる。


「ここがお前の部屋だ。」


そう言ってリヴァイさんは部屋の扉を開け放った。
綺麗に掃除も済まされ、本当に後は私の荷物を運び込むだけの状態の部屋。


「2人部屋、です、か?ルームメイト、は?」


リコちゃんのように、上手くやっていけるかな、なんて思いながらリヴァイさんに尋ねた。


「ルームメイトはいない。」
「え?」
「…お前は耳が良いから雑音が気になって寝不足になられても困ると言うエルヴィンの計らいだ。」
「エルヴィンさんの…。」


エルヴィンさんとは結局、訓練兵の時に2回、リヴァイさんの鬼特訓の様子を見に来た時に会ったくらいだ。
ハンジさんが前に言ってた「エルヴィンは誰より優しくて誰より非情」って。
「非情」の部分は未だにわからないけど…。
今の話を聞いてエルヴィンさんは優しい人だって、私も思う。


「エルヴィンには明日会いに行くことになっている。」
「…はい。」
「今日はもう遅い。休め。」
「はい。…リヴァイさん、」
「なんだ?」
「あ、ありがとう、ございました。いろいろ、と…。」
「…まだ何も始まっちゃいねぇけどな?」
「は、はい。だから、あの、これからも、よろしくお願いします。」


たとえ並みの成績とは言え、訓練兵としての訓練をきちんと修了できたのはやっぱり、他ならぬリヴァイさんのお陰だと、思う。
そう思い、1度きちんとお礼を、って。
良い機会だから、って伝えたら、あぁ、とだけ返事がきてリヴァイさんはそのまま去っていった。
1人になったその部屋をもう1度見渡し深呼吸をする。
ここから、私の調査兵団兵士としての一歩が始まる…。

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bkm

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