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変態に恋、されてしまいました


食べちゃうぞが冗談に聞こえません


今日はチーム江古田で、中間テストお疲れパーティをする日です。
会場は中森青子邸です。
私別に参加しなくても…、ってやんわり断ったら、名前ちゃんが来なかったら快斗に青子の家が壊されちゃう!って可愛く泣いて縋ってこられたためしぶしぶ参加になりました。
いくら快斗でも人の家壊したりしないでしょー。
って言ったら名前ちゃんはわかってないんだよ、快斗くんの破壊力…。
って恵子がしみじみ言ってきた。
何をしてきたんだ、黒羽快斗…。


「なになに!?なんで名前エプロンしてんの!何か作ってくれんの!?」


大きい尻尾をぱたぱた振って近寄ってきた快斗。
…ほんとただの大型犬だ。


「うん、あともう少しね。でも今日の料理は全部青子と2人で作ったヤツだよ」
「マジで!どれ作ったの!?」
「そっちのテーブルに置いてあるヤツ」
「そっち?…これ?これ名前が作ったヤツ?」
「うん、そう」
「いっただっきまーす!」
「あ、まだダメだって!」
「うまーーい!!名前可愛い上に料理もできるなんて、すぐにでも俺のお嫁さんになれるっ!」
「…そう」


最近むやみに反論しないことにした。
反論すると余計に快斗の思う壺だってようやく気がついた。


「快斗もあっち行ってみんなの輪に混ざってていいよ。出来たら持っていくから」
「俺ここで手伝うからいーの!何かしてほしいことは?」


あっちに行っててほしい。
とは、言えなかった。


「じゃあ…、これから揚げ物するからそこのトレイ用意してくれる?」
「これ?」
「うん。で、そっちにあるペーパー敷いて?」
「リョーカイ!…これでいい?」
「うん、ありがと」
「なんか新婚さんみたーい!」


…逆らっちゃダメだ。
ここは聞き流そう。


「で、次は?」
「油があったまるまで待機」
「リョーカイ!」


横に立つ快斗にちらっと視線を送る。
ほんとに「待て」をさせられている犬のように大人しく待っている。
…黙ってればカッコ可愛いんだよな。
黙ってれば。
いや、口を開いても楽しいし、おもしろい。
ただちょっと人より変人というか、…むしろ変態なだけ?
でも冷静に考えて他の人に同じ事されたらフツー警察に被害届けだしてると思う。
そうならないのは、快斗の魅力。
そう思えてしまう何かがあるから、不思議でならない。
快斗の何がそうさせるんだろう。
うーん…。


「…そろそろいーんじゃねー?」
「え?あ、うん、そうだね!じゃあから揚げ作っちゃおう!」
「あ、おい!一気にいれたら」
「あっつーーー!!!」


本人を目の前にして本人の魅力について考えている時に、本人から声かけられたものだから動揺してしまって、煮えくり返った油の中に勢いよくから揚げを落としてしまい、見事指先に油が跳ねた。
自業自得。
わかってはいるけど、熱い!!!


「バーロォ!すぐ冷やせ!!」
「う、うん」


勢いよく蛇口をひねって水を指先にかける。
けど、やっぱり痛い…。


「…大丈夫か?」
「う、うーん」
「見せてみろ」


そう言って私の手を取り指先をまじまじ見る快斗。
こ、これもまさかこの間の棚から落下と一緒で傷口ぱっくんなベタな展開になるんじゃ…!


「痛い?」
「…少し」
「…青子!火傷用の薬ねーか?」
「えー?火傷用?どうしたの?」
「名前が火傷した!」
「ええ!?名前ちゃん大丈夫!?」
「え?あ、うん?」


ちょっと、肩透かし。
快斗なら傷口ぱっくん、てしそうだったから。
…うん?
肩透かし?
肩透かしって思った、今!?
ないないない!
ぱっくんされなくて良かった!
うん!良かった!!


「とりあえず、これくらいしかできねーけど」
「ううん、大丈夫大丈夫!ありがと、快斗」
「どーいたしまして!」


快斗の迅速な対応のおかげで指先の火傷特有の痛みもなくなり、無事揚げ物も全部揚げ終わった。
…2つほど火傷騒動で無残に黒こげになってしまったけど。
あとは綺麗な狐色に揚げることができた。


「じゃあみんな!中間テストお疲れ様ー!」
「「「お疲れ様ー!!」」」


ほんとチーム江古田は仲がいい。
何かにつけてこうやって集まっては大騒ぎしてる。
…さぞ楽しい中学生活だったんだろうな。


「名前、はい、あーん!」
「え!?」


いつの間にか横に来た快斗が私が揚げたから揚げを持ってやってきた。
え?あーん?


「ほら、あーん!」
「…私が食べるの?」
「そう!ほら、あーん!」
「自分で食べれますが…」
「ダメダメ!名前火傷しちゃったから食べさせてあげる!」


いやぁ、火傷って言っても指先をちょっと火傷しただけで、自分で箸もてないほどじゃ…。


「ほら、あーんは?」
「…いいよ、ほんとに」
「ダイジョーブ!誰も見てない見てない!」


いやあんた、どういう視力してんだ。
明らかにあなたのお友達全員こっち見てますよね?


「ほらほら、そんな可愛く恥ずかしがってると俺が名前を食べちゃうよ?」
「…えっ!?」
「はい、あーん!」
「…あーん」


単なる冗談には聞き流せない快斗の食べちゃう発言を前に、皆さまの生暖かい目線を浴びながら自分で揚げたから揚げを食べさせてもらいました。


「美味しい?」
「え、うん…、まぁ…」
「じゃあ次何食う!?今日は俺が食べさせてあげるからー!」


無駄にテンション高い快斗を前に火傷した指先とは違う火照りの顔を抑えた。




「…なんか良い感じじゃね?」
「…工藤さん、落ちる日は近いな」
「あー、俺もやっぱ江古田高にすりゃ良かった!絶対毎日大爆笑だぜ?」
「言うな。きっとみんな思ってる…」
「まぁまぁ、こうやって集まれるだけいいでしょ!ほら、羨ましいなら青子があーんしてあげるから!はい、宮本くんあーん!」
「えっ!?…あ、あーん」



「…宮も報われるといいな」
「俺も恋がしてぇ…」


W食べちゃうぞが冗談に聞こえません

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