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変態に恋、されてしまいました


くっつかないでください。移ります変態が


「じゃあ、ここにある奴を社会科準備室持って行ってくれ。ええっと、今日の日直は」
「はいっ!黒羽快斗、工藤名前さんと持って行きますっ!!」
「…お前日直じゃないだろ」
「持って行きまっす!」
「…悪いな、工藤」
「いえ…」


快斗が大暴れするようになって早2週間。
最近じゃ先生達すら生暖かい目を向けるようになってきた。


「…私も何か持つよ?」
「名前やっさしー!じゃあこれ持って!」


地図やらなにやら抱え込んでる快斗から渡されたのは薄っぺらい本1冊。


「いや、そっち持つよ」
「いーって、いーって!俺こう見えて力持ち!」


だったら最初から1人で行けばいいじゃないか。
とは口にしなかった。
最近この勢いに流されている自分に気づく。
人としてヤバイ気がする…。


「でさー」


隣を歩く快斗はすっごく楽しそうにおもしろおかしく話しをする。
イケメンなんだよなぁ…、フツーにしてれば。
口を開けば何かがちょっとズレてる気がするけど…。


「だから俺がそこで」


でも慣れって怖いよなぁ…。
なんかもう「そのうち慣れる」って言葉通りにああまたか、で済ましてきてる自分がいる。
それと最近気がついた。
快斗はほんとに「触り」はするけど「掴む」とか「揉む」とか?
そういういやらしい触り方は絶対してこない。
それが快斗の優しさなのかなぁ、とかちょっと思ったりする。
いや、でも冷静に考えると優しいなら触ってこない?
…危ない、危ない。
流されるな私。


「…どしたー?」
「え?」
「なんか悩み事?」


あなたのセクハラについて悩んでるんです。
って、なぜ気づいてくれない黒羽快斗…。


「悩みがあるなら俺に言えよ?1人で抱え込んでても解決しねーぞ」


良い事言うんだよ。
うん。
良い事言ってるんだけど、元凶が自分だってなぜ気づかない。


「…なんでもない」
「そか?あ、わり、ちょっと開けてくんねー?」
「ああ、うん」


ガラッと開けた先にはちょっと埃っぽい社会科準備室。
うーん、なんというか、上の棚にあるヤツが女の子目掛けて落ちてきて、それを庇った男の子と恋に落ちちゃいそうなベタな展開にもってこいな部屋だ。
…気をつけよう。


「きったねー部屋だな、いつ来ても!」
「だね。早く片づけて戻ろ」
「おー」


これはここでー、これはあっちー、と快斗がさくさく片づけ始める。
…イケメンだし、優しいし、テキパキ動くし。
むしろこの人に今現在彼女がいないことが不思議なんだけど。


「よし、あとはこれをあの棚の上に、…っと!オッケ!おーわり!」
「ありがと、快斗くん」
「いえいえー」


よく考えたら私、日直でもないのに無理矢理後片づけさせられたんだから謝る必要ないんじゃないのか?
でも快斗がえらい機嫌よさそうだからいいか。


「じゃ、教室戻っか!」
「うん」


ここは、上の棚にあるヤツが女の子目掛けて落ちてきて、それを庇った男の子と恋に落ちちゃいそうな部屋。
入口の方に振り返ろうとした瞬間、快斗の後ろの棚の資料が、揺れた気がした。


「危ないっ!!」
「え?て、うわぁぁ!?」


ドサドサっと資料が落ちてきて、埃が舞い上がる。
なんでとか、どうして、とかわからないけど。
無意識に快斗を引っ張った私と、突然引っ張られ踏ん張りが効かなかった快斗はそのまま床に倒れ込んだ。


「…快斗くん、大丈夫?」
「…」


そりゃあ見事に私に覆い被さるように倒れ込んできた快斗が、ピクリとも動かない。


「快斗くん?」
「…」


快斗が返事をしない。
…まさかどこか打った、とか?
やだっ!


「おい、どうした!大丈夫か!?」
「先生!黒羽くんがっ!」
「黒羽大丈夫かっ!」
「…俺ここから動きたくなーい」


それまで私の上に倒れこんでた快斗。
位置的に私の胸の谷間あたりに顔がくるような倒れ方をしていて。
その状態のまま、すりすりと私の胸に頬をすりよせていた。


「…」
「…」
「…」
「…大丈夫ならいいんだ」
「先生っ!?」
「そこ片づけてから戻れよ?」
「はーい」
「置いてかないでっ!!」
「…頑張れ、工藤」
「先生ー!!」


見捨てた!
あの人教師なのに生徒を見捨てた!


「いい加減」
「ん?」
「どきなさいバ快斗ー!!」
「名前がやっと快斗って呼んだっ!!」
「そういう問題じゃないでしょ!」
「快斗くんと快斗じゃ親密さに大きな違いがあんだろっ!」
「わけわかんないこと言ってないでどいて!私までおかしな目で見られる!」
「ダイジョーブ!名前は可愛いなって目で見られてもおかしな目で見られることはない!」
「快斗と一緒にいるからおかしな目で見られるんでしょー!!」


微妙に噛み合わない会話が、この後しばらく続く。




Vくっつかないでください。移ります変態が

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