Detective Conan


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8


「快斗って誰ですか?」
「工藤くんは知らないかな?最近人気のあるマジシャンで、」
「もしかして黒羽ってマジシャンですか?」
「あ、知ってる?快斗くんも有名人だね」
「いや、あの…妻が好きで…」


語尾を口籠もらせながら言った工藤さんを改めて見た。


「ご結婚されてるんですか?」
「あ、はい…まぁ腐れ縁、て奴なんですけどね」
「あー、そう言えば一課の目暮警部が言ってたな。なんでも奥さんは『あの』眠りの小五郎のお嬢さんで幼馴染だったとか?」
「…警部も意外にお喋りですね」


工藤さんがどこか赤い顔をして答えた。


「あ、そう言えば佐藤さん空手やってたよね?」
「え?えぇ…」
「なら知ってるかな?空手の都大会で2連覇した『米花の女拳士』」
「え…?」
「そう呼ばれた子が工藤くんの奥さんなんだよ」


ね?と鈴村さんはからかうような表情で工藤さんを見た。


「…もしかして、」
「はい?」
「奥さんのお名前は毛利蘭…?」
「え?えぇ、そうです」


私の言葉に対してのはっきりYESとは言わなかったけど、その返答は十分肯定するものだった。


「結婚したんですか…」
「…失礼ですが、うちの妻をご存知なんですか?」


工藤さんの問いに返答しなかった私に訝しげに聞いてきた。


「………一刻も早く忘れたい人間トップ5です」
「えっ!?蘭が何かしたんですか!?」


毛利蘭。
彼女は私が16歳の時から、私のそう長くはない人生の中で忘れたい人物トップ5に君臨する。


「高1の都大会決勝戦で、」
「はい?」


あの夏の日を思い返しながら、ポツリポツリと話し始めた。


「当時無敗を誇っていた毛利蘭を倒したのが私です」
「え…」
「でも都大会個人の部からは上位3人がインターハイに出場できたんですが、」


当時は私が勝てないのは、後にも先にも美和姉ちゃんだけだと思っていた。
美和姉ちゃんには勝てないかもしれない。
でも美和姉ちゃんのように強くなるようにと日々精進してきたわけだが…。


「私が高校3年間で唯一負けた高1のインターハイ決勝戦の相手が毛利蘭です」


その私をインターハイと言う大舞台で叩きのめした、正確には蹴り飛ばしたのが毛利蘭だった。


「…あーっ!思い出した!蘭の3年の総体の時、表彰台ですっげー泣いてた杯戸の1年っ!!」


そう言って私を指差しながら叫んだ工藤さんにチラッ目をやった。


「あ…、いや、表彰台で悔しそうにしてた女の子ですよ、ね?」
「…まぁ、否定はしませんが」


私が視線を投げかけたことに気がついた工藤さんは、苦笑いしながら言葉の訂正をした。


「そっかぁ、知り合いだったのかぁ。世間は狭いってほんとだねぇ!」


どこか殺伐とした空気の中鈴村さんが、あはは、と和やかに笑った。

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