Detective Conan


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catch me if you can


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「宮野さんが言った通りですね」


快斗さんの言動に、大きく1つため息が出た。


「ん?志保さんがどうした?」


広げていた手を下ろし、快斗さんは私に尋ねてきた。


「…快斗さんはきっと『それが運命だから』で全て納めると言ってました」
「やべーな、俺の思考バレてんじゃん!」


志保さんさすがじゃね?と言う快斗さんを見て、きっと宮野さんも快斗さんに認められた知能の持ち主なんだろうと思った。
…当然か。
あの人は「私は医者じゃない」と言っていながらも、快斗さんの手当てをし、現にここまで回復させるに至ったわけだから。
並の人間には出来ないことだ。
それこそ、ホームズの相棒であるワトソンのような人なのかもしれない。


「あぁ、七海ちゃんに捕まる理由、もう1つあったな」


その言葉に、改めて快斗さんを見た。


「血、くれたんでしょ?志保さんから聞いた」
「あぁ…。あれはあの時輸血出来る人間が私しかいなかったからで、」
「それでも俺の身体は今、七海ちゃんによって生かされてるんだぜ?」


ウィンクしながら言ってくる快斗さん。


「確かにそれは十分な理由になりますね」
「どっちかって言うと、それ2番手の理由なんだけどなー」


あははー、と快斗さんは笑う。
怪盗キッドを、快斗さんを捕まえるか、捕まえないか。
刑事としての私はもちろん捕まえる一択だ。
だけど…。


「快斗さん」
「何ー?」


快斗さんは、これ以上ここにいたら身体冷えそうだ、ということで、答えの出ない私に、来た道を戻るよう促した。
そしてゆっくりと、来た道を下る。
自然豊かな空気の中を。


「快斗さんが私にかけた魔法、成功したと思います?」


カサカサと落ち葉を踏みながら歩く私を、快斗さんは驚いた顔で見てきた。


「成功してる」
「すごい自信ですね」
「…と、思いたい」


やや語尾を小さく言う快斗さんは、年上には思えない。
この人のこういうところは、本当に狡いと思う。
…快斗さんが私にかけた魔法は、「快斗さんに夢中になる」というもの。
でも私がかかった魔法はきっともっと別の、…この出逢いを運命として受け入れる心を得るという、かけがえのない、それこそ奇跡のような魔法だったと今にして思う。


「先日映画を観たんです」
「おー、何の?」
「Catch me if you can」
「あー、あの天才詐欺師の映画ね」
「『快斗さんに』あれと同じこと言いますよ」


快斗さんは忙しなく瞬きをした。


「Catch me if you can。捕まえられるといいですね、私を」


快斗さんは珍しく唖然とした顔をいた。


「あと1年とちょっと、つきあいますよ。その間に私は全力で『怪盗キッド』を捕まえにかかります。手抜きは一切しません。どんなことよりも最優先で『キッド』確保を目指します」
「…」
「でも『快斗さん』が、1年とちょっとの間で私を捕まえられるなら、逮捕されないかもしれませんね」


私の言葉に再び数回瞬きをした後で、快斗さんは爆笑した。


「おーおー、やってやろーじゃん!てか七海ちゃん、いつの間にそんな不良警官になっちゃったの!?」
「信じていた人間に、人間不信になりそうな嘘吐かれてるって発覚した日からですかね」
「うっわー、すげぇ胸痛いんだけどそれ俺のことじゃないよね?俺嘘は吐いてねぇし!」
「ただ人より隠し事が多かっただけですか?」
「それだ。俺それだ」
「嘘つきは論外ですが、隠し事多い人間も信用できないですね」
「もーない!ほんとに!!」


快斗さんと久しぶりに声を出して笑いあっている。
やっぱり私は、この瞬間が好きだ。


「すみません、手土産もない上慌ただしくて」
「いやいや、うちの倅が迷惑をかけて申し訳ない」
「大丈夫、大丈夫。1年後また連れてくるからその時にもてなしてよ」
「ほう。それは楽しみだ」
「…ほんとすごい自信家ですね」
「自信家じゃなきゃマジシャンなんて仕事できねーっての!」


そして私たちは山を降りた。
刑事と怪盗、そして気のおけない異性の友人という日常に戻るために。

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