Detective Conan


≫Clap ≫Top

catch me if you can


3


中森警部を筆頭に、予告状が出された博物館へとたどり着いた私たち捜査二課の面々。


「おい、新人!」
「はい、なんでしょう警部?」
「お前は現場が初めてだから先に言っておく」
「はい?て、痛い痛い痛いっ!」
「奴は変装の名人!予告状が来た瞬間から身内にも気を許すなっ!いいな!!?」


怪盗キッドは変装の名人。
鈴村さん曰く、キッドの場合「変装」ではなくその人物に「なりきってしまう」から厄介らしい。
それを見破るには今私が中森警部にされたように頬を引っ張ることが1番効果的なんだそうだけど…、


「あ、佐藤さんもやられた?頬赤い」
「…はい」
「警部、女の子にも容赦ないんだな…」


情け容赦なく本気で頬を引っ張り上げる中森警部に、少しだけ目尻が濡れた。


「警部!これが今回の予告状ですっ!!」
「なになにー?…人魚が天を仰ぐ時、暁の星より月の雫を頂きに参上する、怪盗キッド、だとぉ?」


怪盗キッドは犯行前に必ず予告状を出すレトロな犯罪者だ。
鈴村さんの話によると、時にこういう暗号めいた文章でおもしろおかしく予告状を出すそうだ。
暇人なのかその知能の高さを見せつけたいだけなのかわからないけど…この予告状を見る限り、愉快犯ではないかとすら思えてくる。


「キッドの犯行は3日後だ!全員心してかかれ!」
「……あの、」
「うん?なに、佐藤さん」
「どうして3日後だと?」
「あぁ。あの暗号に書かれてたでしょ?」
「…日付はなかったように思いますが、」
「うーん、と…、ほらここ『人魚が天を仰ぐ時』って奴。3日後、あそこにある人魚の像がイベントで別の博物館に移送されるんだ。つまり、」
「館内にいて天を仰ぐことが出来ない人魚が、移送により外に出されるため天を仰ぐ…」
「そう言うこと!」


捜査二課に在籍している刑事は基本「知能犯」を相手にするため、こういうことに関してもわりと手馴れているように感じた。


「あぁ、佐藤さん!」
「あれ?鈴村さん、さっきあっちに行きませんでした?」


そして、いよいよ怪盗キッドの犯行当日。
こんな「現場」なんて初めてで、何をどうしていいのかよくわかっていない私に、鈴村さんが「まぁ、現場初だし、邪魔にならないようにしてくれたらいいよ」と言ってきた。
その言葉通り、邪魔にならない位置で待機しようと思った時だった。


「そう言えば佐藤さんは、一課の『あの』佐藤巡査長のいとこなんだって?」
「え?あ、あぁ、はい。そうですけど…、ご存知なかったんですか?」
「ん?んー…、うわさは聞いてたけど、一応本人に確認しておこうと思って」
「…なんのために?」
「なんの?…そーだなぁ、やっぱり警視庁の元祖アイドルのいとこ殿はどんな子かチェックは必要でしょ?同僚としてね」
「…そんなものですか?」
「そんなものです」
「…あっ!佐藤さん、いたいた!捜し、え…?」
「え?」


私に声をかけてきた鈴村さん。
この段階で、なんで美和姉ちゃんの話を?なんて思ったのは事実。
でもまさかもう1人鈴村さんが現れるまで、その可能性なんて、頭から綺麗さっぱり消えていた。


「す、鈴村さんが2人っ!?」
「キッドだっ!」
「えっ!!?」
「…意外と早くバレてしまいましたね」
「キッドが出たぞーーっ!!!」
「なにーーっ!!?キッド逮捕だっ!!」
「些か忙しないですが、新人のお嬢さん。またいつか、月下の淡い光の下で」
「キッド待てーーーっ!!!」


そう言って私にウィンクを1つ飛ばし、闇に溶けた怪盗キッド。
…中森警部や鈴村さんが言っていた通り、キッドは変装の名人なようだ。
初めて、しかもこんな間近で変装したキッドを全く見抜くことが出来なかった…。
そしてこの後で鈴村さんに、ここに着いてから私とは一緒に行動してなかったという衝撃の事実を告げられた。
と言うことは、今日ずっとこの建物の中で話していた人物は、怪盗キッドと言うことになる。
取り立てて聞かれて困るような内容を話していたわけではないけど、あれがキッドが変装しての会話なんだと思うとどこか釈然としなかった。
これが私と世紀の大怪盗とまで言われている怪盗キッドとの出逢いだった。

.

prev next


bkm

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -