Detective Conan


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幼い頃母を亡くした私にとって従姉妹の美和姉ちゃんこと佐藤美和子は、実の姉のような存在だ。


「佐藤!お前の指導係の鈴村だ」
「よろしくね」
「よろしくお願いします!」


強くて優しくてカッコいい美和姉ちゃん。
美和姉ちゃんに少しでも近づきたくてなんとか入った警視庁。
入ったからには美和姉ちゃんと仕事を、なんて淡い期待を抱いていたものの世の中上手くはいかないもので、配属されたのは美和姉ちゃんのお隣の課、捜査二課だった。
捜査二課と言うのは知能犯つまり贈収賄、選挙違反、通貨偽造、詐欺、横領、背任、脱税、不正取引なんかの金銭犯罪、経済犯罪、企業犯罪を扱う課で、強行犯つまり殺人とかを扱う美和姉ちゃんのいる一課とはまた違う仕事を担っている。


「鈴木一郎、横領の罪で逮捕する」
「…」
「佐藤!」
「あ、はい?」
「時間!」
「はいっ!えーっと、14時23分です」
「14時23分、被疑者確保!」


犯罪に大小なんてない。
だから刑事としてこんなこと言ってはいけないのはわかってる。
…わかってはいるけど、正直仕事に張り合いを見出せずにいる。


「よ!新人警官、頑張ってるー?」
「美和姉ちゃん!…なんか疲れてる?」
「ん?んー…、実は今連続放火殺人事件の容疑者を追ってて、」


前線で体を張っている美和姉ちゃんに比べてなんと言うか…、犯人は本当に「知能犯」と呼ばれるだけあって手の込んだことをするわりに「知能」を売りにしてるから逃げ足は遅いのかあっさり確保できるような人たちばかりで、少し…と言うか、志し高らかに入庁したわりに肩透かしな部署だと思う。


「やぁ、七海ちゃん」
「え?あ!渉さん、お疲れ様です!」
「うん、お疲れ様」
「仕事には慣れてきたかい?」
「うーん…、どうでしょう?」


入庁よりも前に美和姉ちゃんに紹介された美和姉ちゃんの恋人の高木渉さんは、課が違えど私を気にかけてくれる優しい先輩刑事の1人だ。
ただ美和姉ちゃんの親友の由美さんの話によると、かなり頼りにならないらしい…。
由美さんの話だと美和姉ちゃんより出世したら結婚らしいけど、


「高木ーっ!こんなところで油売ってるんじゃないっ!!例のマンションに丸被が現れたぞっ!!」
「すみませんっ!今行きますっ!!…ごめんね、俺行くから、」
「はい、頑張ってください!」


あの様子じゃまだまだ結婚は先だろうな、なんて思ったこと、美和姉ちゃんには口が裂けても言えない。


「佐藤さん、今日はこの資料を、」
「はい」


捜査二課は基本頭を使っていてかつ大きい金銭が動く犯罪を取り締まる課、と言えばわかりやすいだろうか。
だから日ごろの業務は、大きい金銭が動いてそうなブラック企業の下調べと言う地味ぃぃぃな作業だ。
…からこそ余計、夢と現実の壁にぶち当たった気分でいる。


「警部っ!来ました!予告状ですっ!!」
「なにーっ!!?どこだっ!?今度はどこを狙うっ!!?」
「杯戸シティホテルの、」


そんな日々を過ごしていた時、捜査二課が沸き立つ事件が飛び込んできた。
私の指導係の鈴村さんに尋ねると、うちの課で1番の獲物がやってくるそうだ。


「1番の獲物、です、か…?」
「そう!佐藤さんも知ってるでしょ?怪盗キッド!」


捜査二課は知能犯が専門だ。


「…強盗犯であるキッドは捜査三課ではないんですか?」
「あぁ、普通は強盗は三課の仕事なんだけどね。キッドの犯行はなんて言うか金額が、ね。三課での許容範囲を悠に超えてる額なんだよ。…むしろうちで扱ってる犯罪の中でもダントツで独走中な額だけどね」
「…なるほど」
「鈴村っ!何喋ってる!現場に行くぞっ!」
「はいっ!佐藤さんも来て」
「はいっ!!」


先を走る中森警部や鈴村さんに続き現場に向かうべく私も走り出した。
…これが、私に起きた魔法のように不思議で胸が高鳴る出来事の始まりだとも知らずに…。


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