Detective Conan


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catch me if you can


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「それで説明はあるんですよね?どういうことなのか」


工藤さんから切り出したのだからと、ここで本題を持ち出した。


「七海さんは何が聞きたいんですか?」
「全てです。何故今この状況なのか、あなたとキッドはどういう関係なのか、全て教えてください」


私にはその権利ありますよね、と言うと工藤さんは困ったように頬を掻いた。


「んー…じゃあ1つずつ説明しますね」


工藤さんは言葉を選びながら話し始めた。
今日の検問の大元にあった連続殺人事件。
組織的な犯罪が疑われたその事件を解決させるためには証拠が必要だった。
…多少強引であったとしても。
そしてキッドはキッドで、元々この組織と対立関係にあった。
証拠を集めるためにこの組織事務所に侵入した工藤さんと、敵の弱点を探っていたキッドは鉢合わせをした。


「もっと別の方法はなかったんですか?」
「そこはもう、何も言い訳できないですが、この連続殺人を止めるためにも早急に証拠が必要だったとしか…」


そして侵入がバレ、キッドが狙撃にあった、と。
でも彼らが侵入してる間にまた同じ手口の新しい殺人事件が起こり捜査一課はすぐさま大規模検問に踏み切った、ということらしい。
検問の外のこの建物に逃げるに逃げられなくなり私に助けを求めてきた、と。


「今日の概要はわかりました。でもそれ以前に、あなたとキッドの関係はなんですか?」
「それが一番答えにくい質問ですね。あ!別に答えたくないってわけじゃなくて、…俺たちの関係を言い表す適切な言葉が見当たらないんです」


工藤さんは本当に申し訳なさそうな顔をした。


「一番近い表現は、誰よりも信頼しているライバル。でもいくつもの事件を共に過ごしていたから敵対してるだけじゃなく、時には協力して、時には助け合って過ごしてきたライバルです」


目を細めどこか遠くを見ながら工藤さんは語る。


「かつて俺とアイツは別々の組織を追っていた。俺は探偵として、アイツは怪盗としてお互いその組織を追いつめる必要があった。必要であれば、誰よりも信頼できる味方としてお互いを頼るようになり、俺はアイツに何度も命を助けられました。現に今日も俺を庇ったからアイツは2発目を喰らった。…そういう経緯があるからこそ、俺は盗みを働いていない時のアイツを捕まえることが出来ないんです」


探偵失格ですね、と工藤さんはどこか寂しそうに笑った。


「以前工藤さんにお会いした時に、キッドと顔が似てる人間の話しをしたと思うんですが、あの時すでにキッドの正体を知っていたということですか?」
「半分イエス、ってところですね」
「半分?」
「えぇ。俺もアイツも、昔からお互いのことには必要以上に踏み込まないんです。それは聞いてはいけない気がして」


お互いにね、と工藤さんは言った。


「でもアイツは生来の目立ちたがり屋なのか、あんな風にテレビに出るようになったらさすがに気づくでしょう」


ははっ、と乾いた笑いが響く。


「なら、」
「はい?」
「…なら、私にキッドの素顔を教えてくれたのは何故?」
「あー…」


私の言葉にガシガシと工藤さんは頭を掻いた後で、


「だってやっぱり、蘭の知り合いがアイツに騙されるかもとか思ったら止めますよ」


苦笑いしながら答えてくれた。


「七海さんは機転が効くし、あの情報だけである程度警戒してくれるかなって思ったんです」


最もあまり役に立たなかったみたいですが、と目を閉じて工藤さんはため息を吐いた。


「俺からも聞いていいですか?」
「はい?」
「以前七海さんが聞いてきた『月が見える場所で』っていうアレ。言ってきたのアイツじゃないですか?」


どうなんだ、といでも言うように工藤さんは少し眉を上げて尋ねてきた。
ここまで話してくれた相手、それも稀代の名探偵に今さら隠しても意味がないだろう。


「そうですね」
「だと思った。あの時は七海さんが真実にたどり着きアイツとの縁が切れればと思ったんですが、でもあれがあったからこそ今日七海さんに助けを求めたんです」


俺の知らない絆がありそうでしたから、と工藤さんは笑って言った。
…怪盗キッド、彼は犯罪者だ。
その逃走を助け匿っていると知られれば私たちは共犯者扱いされるだろう。
だけどそれでも…。
この日、私の中の正義、信念が大きく揺らいだのをはっきりと覚えている。



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bkm

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