Detective Conan


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catch me if you can


11


「…ハァ…」


キッドの犯行があった翌日の警視庁捜査二課で、朝から何度も私のため息が響いているように思う。


「佐藤さん、朝からため息ばかりだね?昨日のキッドとの対峙で何かあった?」


そこを鈴村さんに的確に突かれた気がした。


「………いえ、なんでもありません」
「そう?」


自分で言うのもなんだけど、私はきっと恋愛偏差値はさほど高くない。
人並みに男性との交際経験もあるけど、豊富かと言われたらNoだ。
昨日のような行為を、犯罪者が現場から逃げるために隙がほしかった故の行為だ、ときっぱり割り切れるほど経験値があるわけでもない。
…故に、昨日の怪盗キッドの行動が尾を引いていた。
逃げるためとはいえ、何故あえて?
彼なら他にも方法はあったはずなのに、どうして?
この時の私は、そんな言葉が脳裏を駆け巡っては消えていた。


「佐藤!」


その日、勤務時間も終わり帰ろうとした時、中森警部に呼び止められた。


「はい」
「お前、今週末は何してる?」
「週末ですか?…特に予定はありませんが」
「そうか!じゃあ快斗くんのマジックショーに行ってやってくれ!」
「…………はい?」


警部は公私を混同したりするタイプではないけど、思い切り公私を混同しているような台詞を吐かれた。


「この間青子が…、あぁ娘のことだが、娘がうちに来た時に頼まれたんだよ」
「…何をでしょう?」


この時すでに嫌な予感はしていた。


「快斗くんが披露宴で見つけた俺の部下の女刑事にチケットあげたようだが、その人がショーに来てくれるか心配してる、とな」


俺の部下の女刑事なんてお前のことだろう?と中森警部は確信的に言った。
…嫌な予感と言うものは、どうしてこうも当たるのだろうか。


「はい、まぁ、確かにチケットは貰いましたが、」
「そうだろう?快斗くんのチケットはなかなか入手し難いものだが、青子が聞いた話しじゃその女刑事はあまり乗り気じゃなさそうだったらしい」
「…」
「快斗くん自らがチケットを渡すと言うのは珍しいことだから、出来ればその女刑事に見に行ってほしいんだと言われてな」
「はあ…」
「暇なんだよな?今週」


ここに配属されたばかりの私でも、これは知っている。
これが世に言う、上司からの圧って言うものだろう。
…快斗さんのマジックショーは本当に人気で、高値転売だったとしても入手し難い物と知った身としては「気が向かなかった」の一言で断るわけには行かないと思っていたところだった。
でも=行く、となるわけでもなかったものの、こういう言われ方をしたら、


「行こうとは思います、一応」


と言うしかなった。


「おぉ、そうか!じゃあ頼むぞ!いやー、良かった良かった、これで青子も安心するだろう」


やれやれ、なんて言いながら中森警部は帰って行ったけど、はっきり言ってやれやれと言いたいのは私の方だ。
上司からの圧とは言え、何故マジックショーに、しかも1人で行かなければならないのか。
そもそもマジックショーなんて行ったことがない。
どんな格好で行けばいいのか…。


「佐藤さんもそろそろ上がりの時間だよー!」
「はい、今行きます」


大きく1つため息を吐いても気の重さが抜けずにいた私はこの時初めて、昨夜の出来事を忘れることが出来ていた。




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