Attack On Titan


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ゴロツキ純愛ラプソディ


5


「俺はイザベルな!お前は?」


公僕がそんなにエライのかよ!ってくらい「ここ」の連中は俺たちをバカにしたような目で見る。
初めての遠征で兄貴の実力を知り、そういう連中も減ったとは言えまだまだだ。
「所詮地下街から来た底辺の奴ら」
それがここの人間の大多数の意見だった。
けど 、


「私はエリザ。よろしく、イザベルさん。」


エリザだけは最初から違っていた。


「イザベル『さん』だって!」
「え?イザベルさんはイザベルさんでしょう?」
「俺はイザベルでいーって!その代わりお前のこと、エリザって呼ぶからな?」
「それは光栄ね、イザベル。」


はっきり聞いたわけじゃないけど、コイツ良い家に生まれたんだろうなぁ、って思うくらい…なんて言うか「上品」とでも言うのかな?
見た目も見たことないくらい綺麗な金髪だし、話し方も、他の奴らとはちょっと違っていた。


「あのさ、」
「はい?」
「コーエーってなんだ?」
「うーん…嬉しいです、と言うこと、かな?」


どう見たって、俺の方がバカだろうし、俺の話つきあうの大変じゃねぇかな、って思うんだけど、


「で、その時兄貴が、」
「本当、凄いねそのお兄さん。」
「だろ!?だって兄貴だしっ!!」


エリザはちゃーんと最後まで俺の話につきあってくれた。


「イザベル、少しいい?」
「おー?なにー?」


それは兄貴が怪我した遠征から帰還して数日経った日のことだったと思う。


「イザベルのお兄さんのことなんだけど、」
「へ?兄貴がどうした?」
「…実は、」


兄貴は怪我して救護班のテントに世話になった時、エリザに言ったそうだ。
「俺の身体に触るな」って。


「あー…、なんつーか、うん。兄貴そういうところあるって言うか、悪気はねぇんだ。…たぶん。」


エリザの話だと縫ったし、熱もあるってのに、兄貴が飛び起きて自分のテントに戻るんじゃないかってハラハラしてたらしい。


「なんとかその日はそのままテントで過ごしてくれたからホッとしたんだけど、」
「なんだ?」
「その後の診察に来なくて…。」


ハァ、と、エリザは大きなため息を吐いた。


「そりゃあ仕方ねぇだろ!」
「仕方ないじゃなくて、」
「だって医者に見せるって言ったら注射するだろー?」
「…え?ううん、診察では、」
「兄貴は注射痛ぇから嫌いだし!」


後になって兄貴そんなこと言ったことねぇや!って思ったけど、俺が嫌いなんだから兄貴だって注射嫌いだと思う。


「そ、れは、」
「うん?」
「ずいぶん、可愛らしい人なのね…。」


エリザの白い肌が少しピンクになった気がした。


「兄貴は可愛いんじゃなくて、カッコいいんだ、って!」
「…そう、だね。」


エリザはキラッキラの金の髪を揺らしながら柔らかく笑った。
俺は地下街から来たから、神様なんか全く信じてない。
神様って奴がいたら俺みたいに目の前で親を殺され飢えて死にかけたガキ、いるわけねぇもん。
…でももしかしたら、女神様ってのは、いるのかもしれない。
それはもしかして、エリザのような顔、してんのかなぁ、とか…。
自分の癖っ毛のある赤い髪を触りながら思った。


「へぇ!じゃあエリザは、」
「はい。元は医者志望だったんです。」
「あのさー、」


俺は自分でも口が悪いのはわかるし、…大きい声じゃ言いたかないけど、頭もちょっと、って部分があると思う(でもすっげぇバカってわけじゃないんだからな!!)


「ん?どうしたイザベル?」


でもこういうことに関しては、鋭いと思う!…たぶん。


「ファーランて、さ、」
「うん?」
「エリザが好きなのか?」


だから思ったことを口にしてみた。


「はっ!?ばっ、おまっ、何言っ」
「ファーランすっげぇキョドってんだけど。」


俺の言葉に言葉を詰まらせ、言い訳でもしようとしていたファーラン。
そこをさらにツッコミ入れてやった。
ら、


「………」


あぁ、その顔知ってるわ俺。
って顔でファーランは無言のまま「もう喋んな馬鹿」って言ってる気がした…。



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