Attack On Titan


≫Clap ≫Top

ゴロツキ純愛ラプソディ


3


「…お前、何やってんの?」


リヴァイの想い人(本人は断じて認めていない)が判明してしばらく。
当然、行動を起こすのかと思いきや、全くそんな素振りを見せないリヴァイ。


「何がだ?」
「何が、じゃなくてだなぁ…。」
「あ?」


リヴァイは相変わらず無口、無表情のまま、フラゴン分隊長さんの言いつけ通り訓練をこなしている「だけ」の日々に徹していた。


「…じゃあエリザ、また後でな!」
「うん、また後でね。」
「おーい!兄貴ー!ファーラーン!!」


いや…、全くじゃあ、ねぇな…。
イザベルが一緒にいた相手…エリザを、ほんの少しだけ、他の人間より目で追うようになった。


「お前さー、それじゃ何も伝わらねぇぞ?」
「…あ゛?」


1日が終わって、リヴァイと部屋に2人、自前の酒をリヴァイと酌み交わしていた。


「だってお前、行動起こさねぇことには何も変わらねぇだろ。」
「別に何かを変える必要もない。」
「お前ねぇ…。」


リヴァイは俺の言葉にくっきりと眉間に皺を寄せた。


「確かに『お前が』変える必要はないかもしれねぇが、相手が変わったらどうすんだよ?」
「…言ってる意味がわからねぇな。」
「だからー!仮にエリザがそれこそエルヴィンやミケだっけ?やたら臭い嗅いでるような変人の女になったらどうするんだ、ってこと!」
「………」


リヴァイは俺の言葉に、コトリ、と持っていたグラスをテーブルに置いた。
沈黙漂う中、何かを言おうと何度か口が開かれるが、その度に何も音にならないまま閉じるを数回、リヴァイは繰り返した。


「それは、」
「それは?」
「…クソがつくほど不愉快だ。」


そしてようやく出た言葉がそれだった。


「だろう!?だからもっと行動を、」
「だからと言って、」
「あ?」
「何をどうこうする気は全くない。」
「…なんで?」


リヴァイとのつきあいは、わりと長い部類に入ると思う。
だが未だ、何考えてんのかわからない時がある。


「どこぞの豚野郎があの女とヤってると思うとそれは不愉快以外の何ものでもない。」
「まぁ、そうだろうな。」
「だからと言って、それに対してどうこうする気はない。」


元々、どっかズレてるところがある奴だとは思ってたが(地下街にいる奴らはそんな奴らばっかだが)コイツ本当に俺と違う。


「…いや、違うな。」


そう思った時だった。


「それに対してどうしたいのか、自分でわからない。」
「え?」
「…その表現が近いかもしれん。」


リヴァイが呟くようにそう言った。
それを耳にした時、


「1つ確認していいか?」
「なんだ?」
「お前童貞じゃないよな?」


コイツがまだ、10代前半のガキのような状態なんじゃないかって思ってしまった自分を、


「『良い女がいる』からと何の病気持ってるかわかったもんじゃねぇ女のいる娼館にあれだけ無理矢理連れ回していたお前が言うか?」


少しだけ後悔した。


「だよなぁ…。いやまぁ、ただの確認?」
「…」


俺の言葉に、ギロリと音が出そうな程睨んだ後、再びグラスに手を伸ばした。
…えぇー、っと、ならリヴァイは、肉体的には十分経験がありそれなりに女の扱いは知ってるはずの男なわけだけど、エリザに他の男が出来るのは嫌だと言うのは認めるが、そこから先どうしたいのかがわからない、と。
けどそれは誰がどう贔屓目で見たとしても、恋って奴の入り口にいるんじゃねぇか、って俺は思うわけだけど。


「なーんか、地上に出てきた甲斐って奴、あったよな?」
「…はぁ?何の話だ?」
「べっつにー。」


後になって分隊長さんと飲んだ時、俺は所謂「手が早い」部類に入るんだそうで、世間一般じゃ恋の入り口辺りにいる時はもう少し躊躇うらしい。
だけど俺たちは地下街を根城にしていた元ゴロツキ。
うかうかしてたら、あっという間に大事なモン掻っ攫われちまう。
そうならないように手を打っておこう、って言うのは間違いじゃあ、ないよな?
この日から、地下街から続くこの不器用な俺たちのリーダーのために「俺が」何かしてやろうかと考え始めた。



prev next


bkm

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -