Detective Conan


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カタルシス


4


「なに、泣いてるの?」


僕は昔、いわゆる「英才教育」と言うのを受けて育っていた。
別にそれは苦でもなく、当たり前のものだと思っていた。
けどたまに田舎の曽祖父の家に訪れると「男の子は外で遊べ」と、自宅ではしたことのないような「遊び」を曽祖父に教えてもらっていた。
それは父や母が僕に与える教育とは別の、僕に取ってはかけがえのない時間になっていた。
そんな時間を僕に与えてくれた曽祖父の死に、通夜の最中家を抜け出し、近くの公園で泣いていたところを、同じ年頃の少女に声をかけられた。
涙は恥ずかしいものという認識がどこかにあった僕は、急いで目元を拭いたが、止めどなく溢れる涙を止めることは出来なかった。


「あのお屋敷の子でしょ?」
「…」
「あそこのおもしろいおじいちゃん、『死んだ』ってみんな言ってた」


その言葉にその子を思い切り睨んだことを、覚えている。


「ならうちのママと一緒だよ」
「え?」
「うちのママも『死んだ』んだって」


驚いてその子を見るけど、その子は笑っていた。


「『死んだ』ら目に見えないけど、ずっと傍にいてくれるんだって」
「…」
「だから寂しくないよね」


何を言おうとしたのか、今となってはもう思い出せないが、僕が口を開こうとした時、


「お坊ちゃま!ここにいらしたんですか!」
「ばぁや…」
「お父様やお母様が捜してらっしゃいますよ!」
「あ…、」


ぐいぐいと引っぱるばぁやに引きずられ、その場を離れた。
後ろを振り向くと、僕に向かっていつまでも手を振っている女の子の姿が見えた。
その後気になって、ばぁやに聞いてみたら親の事情で曽祖父の家の近くの家に引き取られている女の子−中森青子さん−ではないかと言われた。
母親が亡くなったと言っていたし、恐らくそうだろうと思う。
彼女はきっと、あの日のあの出来事を忘れているだろう。
だが僕の中では鮮明に残る記憶。
日本には確かに怪盗キッドを捕まえに来た。
それともう1つ。


「白馬探です。今日からよろしくお願いします」


もう1度、彼女に逢うために…。

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bkm

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