■56
何故僕は彼に対して言葉を投げつけたのか…。
「『目障りな』君を捕まえるためならば、何においても君を追います。」
それはいつも通りの「彼」とのやり取り。
だが
彼は確かに言った。
「どっちが目障りだ。」
それは「怪盗キッド」ではなく、彼本来の…「黒羽快斗」が顔を出した瞬間だった。
きっとこれはまたとないチャンス。
そう思いこちらから仕掛けたが、
「っと!」
「…残念。何やら考え事の最中だったようなのでチャンスかと思ったのですが…。」
直前で交わされた。
「…だから『探偵』という職業の人間は嫌なんですよ。ゆっくり考える時間もくださらないとは!」
「君に考える時間は不要でしょう?君には時間がある。例えば授業中とかね。」
「ご冗談を!」
彼は嘲笑う。
全てを見透かしているようで、…何もわかっていない、そのポーカーフェイスで。
「本当に、僕の思考を麻痺させる『目障り』な存在ですね、君は。」
彼さえいなければ…。
だが…。
彼がいなくても、もしかしたらあの違和感は…。
月下に舞い踊る奇術師の姿を目に映しながら、思うことは1つ。
僕はつまり…。
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bkm