■55
どうして俺は白馬に対してこんな言葉を投げつけたのか…。
「さぁ、今日と言う今日は逃がしませんよ、怪盗キッド。」
「…あなたも大概しつこいですね、白馬探偵。いい加減私から目を逸らしてくれませんか?あなたなら他にも事件を抱えているはずだ。」
「えぇ。確かに他にも事件調査の依頼は来てます。でも『目障りな』君を捕まえるためならば、何においても君を追います。」
その言葉に、「本来の俺」が顔を出した。
「どっちが目障りだ。」
「何?」
「………」
そうだ、コイツさえいなければ。
だが…。
ーんー…、ダメ、ってわけじゃないけど、アイスだけでこの量はなくてもいいかなぁ?ってー
コイツがいなくても、俺は…。
「っと!」
「…残念。何やら考え事の最中だったようなのでチャンスかと思ったのですが…。」
ほんの一瞬、自分の思考の海に沈んだ隙をついて、白馬が俺を捕らえようと動いた。
「…だから『探偵』という職業の人間は嫌なんですよ。ゆっくり考える時間もくださらないとは!」
「君に考える時間は不要でしょう?君には時間がある。例えば授業中とかね。」
「ご冗談を!」
白馬は嫌いだ。
コイツと相入れることなどないだろう。
コイツさえいなければ…。
だが…。
コイツがいなくても、あの違和感は、きっと感じていたはずだ…。
「さて、今宵はもう終幕です。あなたとのお遊びはここまでだ。」
「何!?」
「ごきげんよう、白馬探偵。またいつか、月下の淡い光の中で…。」
それはつまり、俺は…。
.
bkm