Detective Conan


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カタルシス


54


どうして青子は名前に対して言葉を投げかけたのか…。
どうして名前は青子に対して言葉を投げつけたのか…。


「ねぇ、言ってくれなきゃわからないよ。私が誰に対して失礼なことを、」
「快斗は名前が好きなんだよっ!?」


なぜ、それを口にしてしまったのか、自分でもわからない。
だけど、名前の無邪気な言葉の凶器は、青子自身、耐えられなかった。


「な、に、言っ、」
「なんで?なんで気づかないの?あんなに快斗と一緒にいるのにどうして快斗のことわかってあげないの?快斗はずっと、名前が好きだったんだよ!?」


そう、快斗はずっと、…青子じゃなくて、名前が好きなんだよ…。
口にしてしまえば短い言葉。
でも、音にしてしまえば、とても重い言葉。
自分自身が放った言葉。
それはひどく使い古された単語であっても、とても…青子の心に影を落とす言葉だった。


「なに、それ」
「……」
「快斗、快斗、って、なんで?なんで快斗のことしか気にかけないの?」


言ってしまった自分に。
今までの我慢がすべて、解き放たれたような自分に。
惨めさを感じていた時だった。


「白馬くんが、あんなに青子を思ってるのに、なんで快斗なの?白馬くん、ほんとに青子のこと思ってるんだよ?…私じゃなくて、青子を思ってるんだよ?なのになんで、気づかないの?」


名前が目に涙を溜めながら、青子を見ていた。


「同じ日に生まれた同じ顔なのに、何をするのも、いつも青子の方が優秀で、…白馬くんだって…、私じゃなくて、『優秀な』青子の方が好きで…。そんなに恵まれた環境にいることに、どうして気づかないの?」


今にも泣きそうな顔をしているのは、もう1人の青子…。


「青子が恵まれてる?」
「…」
「どこが?どこが恵まれてるの?」
「え?」
「ねぇ、青子はずっと、『青子の方がお姉さんなんだから頑張らなきゃ』って、ずっと言い聞かせてきて、名前を守らなきゃ、って思ってきて、気がついたら全然女の子らしいこと、できないのにっ、」
「…青子…」
「『おしとやかな子の方が良い』って、『好きな人』にもはっきり言われるくらい気が強くなって、でもそうならなきゃいけないって思ってきたのにっ!!」
「…」
「ねぇ、教えてよ!青子のどこが恵まれてるの?…好きな人からも、こんな子嫌って、思われるような青子の、どこがいいの?」


泣きそうな顔のもう1人の自分を見たせいか…。
それとも溢れ出した言葉は他の誰でもない青子自身に突き刺さったのか…。
それはわからない。
だけど…。
堰を切ったように流れ出た感情を止める術なんて知るよしもなく、言葉のナイフを名前に突き立てた。

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bkm

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