Detective Conan


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カタルシス


2


「俺、黒羽快斗ってんだ!よろしくな!」


俺は幼少期に親父と遊んだ記憶があまりない。
そりゃあアレだけ世界中飛び回ってた人だ。
息子と過ごす時間もそうそう作れなかったんだろう。
その日はそんな親父と久しぶりに出かけることになった日だった。
午前中に用があった親父とは近所の公園の、時計台の下で待ち合わせることになった。


「オメーも親父待ってんのか?」


それが「アイツ」との出逢い。
なかなか来ないソイツの親父に、泣きそうな顔をしていたのを今でも覚えてる。
だから家族以外では初めてだったけど、俺のマジックを見せてやることにしたんだ。


「す、すごい!お花が出たっ!すごいね!」
「これくらいどーってことねぇさ!これやるよ!」
「ありがと!こういうことできる人『マジシャン』て言うんでしょ?黒羽くんも『マジシャン』?」
「おぅ!俺は今親父について、マジシャンの修行中なんだ!オメー名前は?」
「名前?…中森、」
「あぁ!ここにいたのか!」
「お父さん!」
「悪い悪い!ほら、もう上映時間になる!急ぐぞ!」
「あ、じ、じゃあまたね!」


その時はそれで別れた。
けど、俺が生まれて初めて家族以外の他人に見せたマジックを喜んでくれたソイツのことが、脳裏に焼きついていた。
そしてすぐに「ソイツ」とは再び出逢うことになる。
ただ、


「中森青子です」
「中森名前です」


俺が時計台で出逢った奴が、双子だったとは、しかも一卵性だったとは思いもしなかった。
いっくらガキでも、「オメーが俺と時計台で逢った方か?」なんて、聞けるわけもねぇし、どちらかはわからないが名前も青子も、あの日の時計台での出来事を、忘れているようだった。
そしてそれから10年近く経った今なんかもっと聞けるわけもなく…。
だからこれはあくまで俺の感。


「バ快斗ぉぉ!!出てらっしゃいっ!!」


屋上に出てさらに梯子で上がった先が、今の俺と、それから


「青子に呼ばれてるよ?」
「知らねぇよ!」


名前の2人だけの、まるで秘密基地。


「後でもっと怒られてもしらないから」
「そん時は名前が慰めて!」


俺の言葉に困ったように笑う名前。
叫ぶ、怒鳴る、ガサツの三拍子揃った青子とは異なり、名前は静かで大人しいし、何よりあまり笑わない。
いや、笑わないって言うか、どっちかって言うと「大人」で青子の笑うツボと違うだけってことなんだと思う。
そんな名前が俺だけに見せる笑顔が、言い知れない優越感を与えてくれる。
そんななんとも言えない日常を過ごしていた。

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bkm

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