■34
人の思いは時として残酷なんだって知った、17の春。
「今思えば、俺の初恋って奴?」
その言葉に、本当に心臓が飛び出るかと思った。
なのに、
「ぜってぇ名前だと思ってたんだけどなぁ…」
快斗が呟くように言った言葉は、青子が絶対に聞きたくない言葉で、青子が、認めたくない、言葉だった…。
「あ、今のコレ内緒な」
少しだけ、赤い顔して照れたように笑う快斗に、胸が締め付けられるかと思った。
「俺ココ最近、あの時計台の思い出が名前とじゃなく青子とだった、ってのが…まぁショックって言ったらオメーに失礼だけど…ショックでさ」
ねぇ、快斗。
青子の方が、快斗と先に逢ったんだよ?
「俺は時計台で逢ったのが名前だと思ってたから、名前を好きになったのか、それとも『今』のアイツが好きなのか…」
青子と名前、何がそんなに違うの?
「なぁんかわかんなくなっちまってなぁ」
「…それで少し、距離を置こうかと思ったんだ?」
「まぁ、そんなとこ?」
名前は青子の大切な妹。
大和撫子って言葉ぴったり似合う、自慢の妹。
けど…。
これほどまでに名前と双子に生まれた自分自身を恨んだことはなかった。
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bkm