■31
名前さんがあの時の少女であると言うこと。
それは変えようのない事実。
…だからこそ、確かめたかった。
「もし良かったら日曜日、僕に時間をいただけませんか?」
僕のあの少女への気持ちは、きっと「初恋」と呼ばれるものだろう。
初恋の少女だと思ったから、青子さんに執着したのか、それとも…。
「舞台って初めて観たけど、すごくおもしろかった!」
「そうですか?なら良かった!」
青子さんに感じた思い。
改めて、初恋の少女は名前さんだと知ってから彼女自身を見ることで、青子さんへのそれは、自分の中で作り上げた虚像だったのかどうか…。
「あのヒロインは、」
「いえ、僕はアレはアレで、」
舞台論評をしあい、過ぎて行く時間の中で、今はまだ不確かだが感じること。
やはり僕は…。
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bkm