■29
どうして青子なのか、気にならないわけじゃないけど…。
それでも、こういう時、いつもは名前を誘う快斗が、青子を誘ってくれたことが、何より嬉しかった。
「あれ?明日、青子も出掛けるの?」
「え!?う、うん、ちょっと…。って、名前も出掛けるの?」
「え!?う、うん、ちょっと…」
ほんの一瞬、だから名前を誘わなかったんじゃないか、って思った。
そんな考えを無理矢理頭から追い出して、翌朝、快斗との待ち合わせ場所に行った。
「快斗、おっそい!」
「悪ぃ、悪ぃ!」
いつも通りな快斗に、口では遅刻だなんだと言っても、やっぱりどこからともなく沸き上がる嬉しさは、隠しきれなかった。
「青子、トロピカルマリンランド初めて!」
「俺も初めてだぜ?」
「そうなの!?快斗っておばさんからよく割引券貰ってるからもう行ったことあるのかと思ってた!」
「バーロォ!誰が遊園地に男1人で行くかよ!」
「あはは!それもそうだね」
他愛ない会話。
いつも通りの会話。
…だからこそ、気づいたんだ。
快斗は、意識的に名前の話題を避けていることに。
「ねぇ、快斗…」
「あん?お!次アレ乗ろうぜ!アレ!!」
「名前と何かあった…?」
青子の言葉に、快斗がピクリと動いた気がした。
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bkm