■24
「…もう忘れちゃった?あの日、時計台で青子と逢ったこと」
「…え…?」
青子の言葉に、快斗はどこか、放心したような感じだった。
「…時計台で父親を待ってた…?」
「なんだ!快斗も覚えてるんじゃない!」
右手で口元を隠しながら呟くように言った快斗。
「あの時の快斗のマジック、青子今でも覚えてるよ!」
快斗の驚き方に、疑問がなかったかって言ったら嘘になるけど…。
快斗が青子との出逢いを覚えてくれていたことの方が、ずっと、嬉しかった。
ピリリリリ
「あ、青子のケータイ…、お父さんだ!ちょっとごめんね」
お父さんは、予定より早く帰れることになったから、夕飯の支度をお願いって言って電話を切った。
「お父さん、予定より早く帰って来れるみたい。名前は熱で寝てるから、青子も早く帰らなくちゃ」
「あ?あぁ…」
快斗にそう言って、家路を急いだ。
翌日のお昼休みが終わる間際。
「青子さんはいつ、僕の曽祖父の死を知りましたか?」
日直で授業で使う備品を取りに行った時、白馬くんに聞かれた。
「あー…っと、確かその時は青子お父さんとこっちにいて、お葬式があってから半月くらいしてから知った、かな?」
「半月後…」
「その時に青子もお世話になったんだから、って、おばあちゃんと一緒に白馬くんちにお参りに行って、品の良いおばあさんに会った記憶があるんだけど…、あの人白馬くんの曾おばあさん?」
「…いえ。曾祖母は既に亡くなっていたので恐らくばあやだと思います」
「ばあやさん!白馬くんちはやっぱりお金持ちなんだね!」
キッドのせいでなかなか出世できないうちとは違う!!
白馬くんも、やっぱり品が良い感じがするし…。
家の「格」とでも言うのかな?
そういう違いを感じる。
…その点快斗は出逢った時から同じだよね。
快斗のお母さん困らせてばっかりで!
今日は久しぶりに快斗を夕飯に呼ぼうか、なんて。
快斗が覚えていてくれたこと。
ただそれだけのことで、全てが、明るくなった気がしていた。
.
bkm