■22
−…白馬くんはもう、忘れちゃったかな?−
あの日、出逢った少女が、青子さんではなく双子の片割れである名前さんという可能性。
それは考えなかったわけじゃない。
だが、どうしてもすぐには、その言葉を受け入れることが出来なかった。
「白馬くーん!ごめん、そっち取ってくれる?」
「あぁ、いいですよ」
日直として、社会科準備室に授業で使う備品を青子さんと共に取りに来た。
…こんなにも、あの少女の面影あるのに、違う人物なのか?
「そうだ!名前に白馬くんの曾おじいちゃんの話しちゃったんだ。正直なところ、白馬くんのおじいさんと仲良かったのは、名前の方なんだよね」
そう言って緩やかに笑う青子さん。
「・・・1つ、聞いてもいいですか?」
「なにー?」
「…青子さんはいつ、僕の曽祖父の死を知りましたか?」
彼女が嘘を吐いたとは思えない。
そんなことするメリットもない。
だが…。
「理屈じゃない」
あの時の少女は、目の前で笑う女性であってほしい。
縋るような思いで、彼女を見つめた。
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bkm