■20
「おはようございます、青子さん、名前さん」
「おはよう!白馬くん」
「おはよう」
昨夜、怪盗キッドから予告状が出たらしい。
名前さんの話だと、黒羽くんは青子さんを伴って博物館に行ったようだから、十分あり得ることだった。
「名前さん」
「え?」
「体調はどうですか?」
僕の問いに少し驚いた顔をした名前さんは、すぐ笑顔で返してくれた。
「うん、大丈夫。昨日はありがとう」
昨日中森家までの道中、黒羽くんのことはもちろん、青子さんのこともそれとなく話題にした。
名前さんは青子さんと性格が全く違う。
控えめで大人しい印象を他人に与える。
だが…。
彼女はとても人を良く観察しているように思えた。
「そうだ。昨日青子から聞いたんだけど」
「はい?」
教室に行く途中の廊下。
いつの間にか青子さんは先に教室に向かっていて。
名前さんと2人、歩いてる時だった。
「白馬くんの曾おじいちゃん、うちのおじいちゃんの家の近くに住んでたんだね」
「あぁ…。僕もこっちに来てたまたま知って、驚きました」
もちろん、それは嘘。
怪盗キッドであろう「彼」がいて、かつ、あの時の少女がいるからこそ、ここに来たのだから。
「もう、泣いてないよね?」
「え?」
その一言に、何を問われているのかわからず立ち止まり名前さんを振り返る。
「『死んだら目に見えないけど、ずっと傍にいてくれるんだって。だから寂しくないよね』」
「…え、」
「…白馬くんはもう、忘れちゃったかな?」
そう言う名前さんは、柔らかく微笑んだ。
.
bkm