■19
「お帰り、青子」
「ただいま!具合どう?」
夕方、予想よりも早く青子が帰宅。
やっぱり快斗に博物館はおもしろくなかったのかと、少し申し訳なくなった。
「1度治まったんだけどね。冷えピタを買いに行くついでにポカリとかいろいろ買おうかと思って出かけたらまた少し熱があがって」
そう言うと青子は、起きてちゃダメじゃない!と私をぐいぐいと部屋まで押して行った。
「買い物してる時白馬くんに会ったよ」
「え?」
「具合悪そうだからって、家まで送ってくれたんだ」
「…白馬くんらしい」
青子が苦笑いする。
彼との会話はもっぱら快斗のこと、青子のことが中心だったけど…。
それでも私には、楽しい時間だった。
「そう言えば名前聞いた?」
私を部屋に送り届けた青子が、フと口を開いた。
「ほら!おじいちゃんちの近くに竹の垣根がずーーーっと続いてるお屋敷あったじゃない」
「竹の垣根…、あぁ、うん、確か名前はー白馬、って、え…?」
青子がニヤリと笑った。
「そう!あのおじいちゃん、なんとうちのクラスの白馬くんの曾おじいちゃんだったんだって!」
青子が得意顔で私に言った。
「…嘘!ほんとに!?」
「うん!本人がこの間言ってたよ?」
知らなかった…。
と、言うか「あの」お屋敷のおもしろいおじいちゃんの名前が「白馬」であること自体、すっかり忘れていた。
…じゃあ、白馬くんは…。
「もしかしたら、青子も名前も、昔白馬くんに会ってたかもしれないよね?」
「…そうだね」
私の部屋の前まで来て、ゆっくり休んで、と、青子は言い去って行った。
白馬くんが「あの」おもしろいおじいちゃんの血縁者…。
じゃあ、じゃあ、白馬くんは…。
だからどうなるわけでもない。
けど何故か、そうであってほしいという、願望が胸に大きく渦巻いた。
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bkm