Detective Conan


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stock-永遠の恋-


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「でかした苗字くん!!」
「…はぁ?」
「最近楽しそうだったから何かあったのかと思ってたんだけどね!」
「はあ…?」
「まさかこんなことになってたなんて!」


そう言われて広げられたのは、今朝のスポーツ新聞三面記事。


―高校生探偵、事件後密かに育んでいた純愛発覚!―


「どこの馬鹿がこんな記事書いたんです?」
「うちのスポーツ新聞担当の馬鹿が書いたんだけど?」
「デタラメ甚だしいですよ」
「いや〜、でもまんざらでもなさそうな写真じゃないか!」


そこには青い顔、いや、実際にはモノクロだから白い顔?した私と、私の頭を撫でる工藤新一の写真が載っていた。
さすがに私は一般人だからか、目元が塗りつぶされてるけど、見る人が見たら一目瞭然。
てゆうか悪いことしてないのに、犯罪者にでもなった気分だ。


「名誉毀損で訴えますよ?」
「クビになる覚悟があるならいいよ」
「どんどん記事にしてください」
「悪いね」


雇われの切ないところだ。
しっかし。
たかが一高校生の恋愛記事が写真つきでスポーツ誌の三面に載るとは…。
高校生探偵侮りがたし…!


「やぁ、苗字くん。今日も早いね」
「…普通だと思いますが」
「いやいや、やっぱり我々が睨んだ通り工藤くんとそういうことになっていたとは!情報が早いわけだ!」
「はぁ?」
「よく言いますよ。目暮警部は気づかなかったじゃないですか!僕と千葉が話てたことを警部は聞いただけでしょう」
「なんだ高木、何かあるのか?」
「い、いいえ、何も!そ、それより苗字さんもやりますねー!年下でしかも相手はあの工藤くんですよ!」
「…イマドキの警官はスポーツ新聞を愛読されるんですね」
「たまたまですよ、たまたま!」
「警部までスポーツ新聞のガセネタ3面記事に踊らされてどうするんですか」
「いやー、若い連中の話についていかないと何かと肩身が狭くてな!」
「だいたい高木刑事はスポーツ新聞より経済新聞を読んだ方が今後のためですよ」
「え、ええ!?僕!?」
「近々佐藤刑事にプロポーズされる予定ならなおのこと」
「ええっ!?ど、どこでその情報をっ!?」
「なに!?プロポーズだと!?ほんとか高木!?」
「えっ!?あ、いや、ほらっ、あっ!警部!工藤くん来ましたっ!!」


高木刑事の声の先には殺人事件現場に来たとは思えないほど、実に優雅な振舞いで騒動の元凶がやってきた。


「あれ?名前さん早いですね!」
「たまたまこっちに来てたし」
「そうなんですか?」
「てゆうか」
「はい?」
「フラッシュ…」
「ああ。すぐ慣れますよ」


慣れてたまるか!
工藤新一が颯爽と私の前にやってきた途端にフラッシュがあり得ないくらい瞬いた。
あんたらここに何しに来たんだ。
殺人事件の取材に来たんだろ。
高校生の恋愛事情追っかけるような仕事に成り下がっちゃいないだろう。
仕事しろ、仕事。


「今日は?見ます?」
「え?」
「刺殺らしいですけど」
「…遠慮しとく」
「じゃあそこにいてください」


前回の「僕の助手」発言が功を奏したのか、すっかりKeep outの内側に入り浸れるようになった。
一記者、編集者としては実にありがたいことだが、その代償はデカイ気がする。


「じゃあ名前さんもそちらの部屋へ」
「うん?」
「推理ショーの始まりです」


えらいスッキリした顔で工藤新一が殺害現場から出てきた。
…この子に迷宮入りという言葉はないのか?
ここでなんたら、その時どーたら、工藤新一のウンチク時おりジョークが飛ぶ。
私ほんとは地域の情報誌担当だったんだけどいつから部署変えしたんだろ…。
いや、デスクはそのままだから部署は変わってない、はず。
でも最近ほんとに「工藤付き記者」に成り下がってきた気がする。
はた迷惑この上ない。


「終わりましたけど、聞いてました?」
「え?」
「…聞いてなかったんですね」
「あ、録音してあるから大丈夫。これそのまま社に転送した」
「なんか」
「うん?」
「ありました?」
「え?」
「なんか変ですよ?」
「…」
「いつもまともかと聞かれても返答に困るんですけどね」
「…その減らず口引き裂いてほしいらしいね」
「あ、戻りましたね」
「その凶器持ってきな。引き裂いてやるから」
「その調子その調子。名前さんはその方がいいですよ」
「…余計なお世話よ、元凶」
「え?元凶ってなんのことです?」
「はぁ?キミ新聞読んでないの?」
「今日のですか?読みましたけど何かありましたっけ?」
「…そうか、キミはスポーツ新聞より経済新聞タイプか」
「まぁその2択なら経済新聞ですけど、何かあったんですか?」
「…特に何もない」
「そうですか」


まぁそれなら良かったです、と実ににこやかに外で待ってるマスコミの前に躍り出た工藤新一。
なんか釈然としない。
この間からどうもスッキリしない。
それもこれもこのお坊っちゃんが頭くることに私が年上ということを忘れて扱うからに違いない。


「よし、バッティングセンター行こう」
「え?これからですか?」
「あ、別にキミ誘ってないから」
「俺野球よりサッカーの方が得意なんですよね」
「だから別にキミ誘ってない」
「でもまぁ、球技なら基本ソツなくこなせますよ」
「…別にキミ誘ってない」
「うーん、ここからなら帝丹中学の近くにあるバッティングセンターが一番近いですかね?」
「…キミ聴力ある?」
「じゃあついでにご飯食べに行きます?」
「キミって意外とマイウェイだよね」
「名前さんほどじゃないですよ」
「キミAB型でしょ?裏表がありすぎる」
「名前さんはB型ですか?自己が強すぎる」
「…」
「…」
「…行くか」
「ですね」


イマイチ燃焼しきれない思いを抱え、白球をひたすら打ち続けた。

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bkm

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